海賊
□Happy Halloween night!
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この野郎いい笑顔だな。
「おやつよろしくねっ!」
「お前これ以上甘いモン食ったら太るぞ」
これでもスイーツならたくさん作ってやってる。というより、試しに作った料理は名無しにやって処理させているような状態だ。
運動しているからか、成長期だからか、名無しはよく食う。
ぐんぐん縦に伸びるし、好き嫌いも特には無い。出されたモンは最後まで完食。返された皿はいつでも米粒すら残っていない。比喩とかじゃなくマジで。
とはいえ、筋肉量に比べて摂取するカロリーの方が多いはずだ。専属でメシ作ってやってる俺が保証する。
それなのにこいつは横じゃなく縦にしか伸びない。燃費が悪いのだろうか。
「大丈夫、私太ってた経験無いもの」
「そうだな立ち上がるだけでも膝ガックンガックンいってたんだもんな」
「羊じゃなくて狼だから!」
「そういう問題なのか?」
話しながらも名無しの口と手は止まる事なく、上手くいかなかったブリオッシュは綺麗にチビの腹に収まった。
こいつ基本食事の時はしゃべらねぇんだけどな。
「じゃ、ハロウィンになったらそれっぽいカッコで突撃するからね!」
「はいはい……」
ぴょんっと椅子から飛び降りて元気いっぱいに宣言する名無し。
彼女に弱い俺は、結局美味い菓子をつくってやろうとレシピ本を開いたのだった。