海賊

□狼は困惑する
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コイツは恐らく、海軍中将サカズキ。噂に聞く敏腕海兵だ。


前世で見たワンピースのアニメにも、こんなやつがいた気がする。それにこっちの世界で読んだ新聞にも、時々写真が載っていたりする。

高い賞金首がやられたとか言う話には、この男が絡むことも多いっけ。

上の指示を無視して任務を遂行し、その更に上から評価されたという話を聞いたことがあるが、そういうところからして、この男はかなり頑固なのだろう。


「分かった、分かった! 一旦下ろして、もう逃げないから!」
「海賊を信用できるか。海楼石に繋げるまでは下さんわ」


キツイ視線が私を見下ろす。


私みたいな下っ端の小娘捕まえたところで、意味無いだろうに。
おそらくサカズキは、白ひげの娘である私を、将来の賞金首になりうると考えたのだろう。


私は戦闘中、基本的に人獣化して戦う。だから“白ひげ海賊団の人狼”として、多少顔を知る人はいるのだろう。実際に、政府側である七武海に知り合いがいるわけですしおすし。そんでもって、こんな小娘でも海賊だから一応捕まえとけ、と。若芽を摘むのが効果的なのは知っている。


こりゃ年貢の納め時かな。名無しの ぼうけんは ここで おわってしまった! ざんねん!


「白ひげ海賊団の人狼、噂には聞いていたが、まさかこんなガキじゃったとはのぉ。その幼さで、あんな海賊に育てられるとは哀れなモンじゃ」
「うっわ勘違い乙。可哀想に思われる事なんざございませんよーだ」
「火傷したいようじゃのぉ⋯⋯?」



がっつり喧嘩腰で返したところ、私を抱えているのとは反対の腕が溶岩を吹く。


「ぅあっつ⁉ ちょっ、おいやめろよ熱いって!」


驚いてギャーギャー喚くと、そのマグマはすぅっと引いた。

びっくりした、一瞬右肩甲骨の火傷の件を思い出したかと思った。


「ふん、狗ごときが粋がるな」


いやお前も犬やろと思ったが、理性のない人狼が親父様にだけはわんわんおしてたらしいから、否定できないのが悲しい。
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