海賊

□狼は困惑する
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うっすらと開いた目の隙間から、ぶらんと垂れ下がった自分の手足が見える。

頭が痛い。

腹も、圧迫されてるのか少し苦しい。

ぼんやりと霞んだ意識の中でそれだけを感じていると、唐突に自分に起きた事を思い出す。


私、なにしてたんだっけ。

あれ、確か、この島で迷子になって、海兵に会って、頭をやられて───⋯⋯。


そこでハッと意識が明瞭になる。そして、自分が腹のあたりを抱えられ、体を折りたたんだ状態で連れられている事を理解した。


「な、っ⁉」


顔を上げると、やはり先ほどのフードの男。


「起きたか」


起きたか、じゃねええええええええええ!!!


その腕をガッと掴み、なんとか抜け出そうと全力で暴れてみる。


「離せこのッ、誘拐とか海軍が何考えてんの⁉離せ人攫い! ペドフィリア!
誰がペドフィリアじゃ小娘! 人聞きの悪い事を言うな!」
「事実子供一人を攫ってんじゃねぇかぁぁ‼‼」


いやぁぁぁへるぷみー親父様あああああああああああ‼
貴方の従順な部下にして娘はここにいますですのことよおおおおおおおお‼



「くっ、まだ暴れるようなら、この場で焼いてやろうか!」
「力に物言わせていたいけな子供を脅すだなんて、なんて非情な軍人だ‼」
「本当にいたいけな子供なら自分でそう言わんわ‼」
「そうだね知ってる‼」



ぎゃいぎゃいと言い合っている私たちを、いろんな人が訝しげに見ている。本人たちは至って真面目に、逮捕するかされないかの攻防をしているんですがね。


災難すぎる。何が悲しくて連行されなきゃいけないんだ。

私なんも悪いことしてなくね? さっきのは正当防衛だろ!


「さ、サカズキ中将? その子供は⋯⋯」
「あっお気になさらず、すぐに帰りますので」
「このわしが帰さん言うたんじゃ、逃走なんぞ出来んと思え」
「海軍が聞いて呆れるよね! その背中にしょってる『正義』の文字は飾りか? 年端のいかない子供を攫うなんて海賊と変わんねーだろ!」
「お前は一体いくつなんじゃ⋯⋯」


全力で罵倒したところ、なんだか微妙な顔をされた。

まぁ、普通の子供がこんな達者なこと言わないよね。そりゃ私だって分かってますよ。分かってるけど、この状況じゃさすがの理性も仕事放棄するよ。
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