海賊

□犬に出会った狼
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暑いのは嫌いだ。

夏か冬かで言ったら冬の方が嫌いだが、だからといって夏のうだるような暑さを好ましく思うわけが無い。


熱いのも嫌いだ。

ていうかトリップしてから実父に火傷を負わされた私にとって、熱は軽いトラウマのようなものだ。嫌でもあの時を思い出してしまう。

それに猫舌の私には、熱い食べ物も飲み物も冷まさないといけない。無理して口にして、舌を火傷した時のあの違和感は大嫌いだった。


つまり夏島に来て激辛カレー食べようとか言い出す1番隊戦闘員のミヤ姐さんは、気温の変化に弱い私から見たら物好きにしか見えないのだ。


「このクソ暑い中でカレー食うの⋯⋯?」
「女の子が汚い言葉を使うんじゃないよ。ルリチョウの側にいて口調の優雅さを学ばないのかい」


んなこと言われましても。


ただでさえ見事に夏バテして食欲が落ちてるのに、カレーとかホントに、ない。

この間食欲不振で完食できず、サッチやコックの皆に謝ったばかりだったのだ。

食べきれなかった分は無駄に元気なルリチョウのお腹に収まったよ。あの子なんであんなに元気なの。


「ったく⋯⋯まぁ向こうには夏バテに良い料理がある。食欲のないお前でも食えるようなモンだ。どうせ昨日から、碌に食べていないんだろう?」
「⋯⋯⋯⋯」


微妙な顔で私は目をそらした。

ミヤ姐の言うとおり、私は軽い食事でもかなり重く感じて、今朝も昨夜も飲み物だけ摂取して終わっている。

そのおかげでトレーニングも、すぐに気分を悪くして休憩に入るという体たらく。酷すぎわろた。


「少しでも体力が付くように、何とか食べな。港から5分と離れた場所じゃないから、付いといで」


ミヤ姐さんの説得に根負けし、大人しく着替えて出掛けることにした。

引きこもりな私には、体調の悪い時に外出なんてしたくないんだけど。
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