海賊
□困知勉行の狼
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短い足で、ずんずん進んでいくマルコの背を追う。
小柄な体では、190cmに近い(いや寧ろもう越えてる?)マルコの歩く速さは割と辛く、時々走りながらついていく。
「ん? ⋯⋯マルコ、何をするつもりだ」
マルコが進む先の扉が開き、ハット帽を手に持ったビスタが出てきた。
ビスタはマルコと私を認めると、マルコに声をかけた。なんだそのロリコンを彷彿とさせるセリフは。
「能力の使い方の指導だ。ゾオン系は俺だけだからよい。俺が教えてやんのが一番やり易いだろうからな」
「そうか⋯⋯」
ビスタは、自分よりずっと小さい私をじっと見つめた。わけも分からず見つめ返して首を傾げてみせると、
「哀れな⋯⋯」
めちゃくちゃ「可哀想に⋯⋯」みたいな目で見られた。
予想外の視線にどう反応すべきか分からなくなり、とりあえず心中でえぇえぇぇ!?と叫びながら微妙な顔をしといた。
「おい、そういうやる気を削ぐような事を言うな。集中出来なくなるだろい」
「お前が相手で集中できなくなる時などないだろう、マルコ。だがまぁ、あまり虐めてやるなよ。可愛い妹なのだから」
「虐めるつもりはねぇよい。教育するだけだっつの」
ふふっと上品に笑い、ビスタはハット帽を被って私の脇を通った。
ちょっとビスタ最後の生きて帰って来いよって一言何⁉ 私これからマルコに何されちゃうの⁉ そんなド鬼畜な指導すんのこの人⁉ 肩叩いて親指立てても怖いだけだからぁ‼
ビスタのおかげで完全にビビりまくってしまった私は、引きつった顔でマルコを見上げた。
こちらを見ていないマルコは、あーと唸りながら後頭部を掻いた。
毛がないから掻きやすそうとか思ってないよ。断じてそんなことはないよ。
「マルコ⋯⋯今の⋯⋯」
「⋯⋯そんな辛い事ァしねぇよい。⋯⋯多分」
おい、最後の。
全く信用できない一言を言って、またマルコは歩き出した。
すごく行きたくないのを抑え、私は大人しくマルコの背を追っていった。