海賊

□困知勉行の狼
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親父様に怪我させた事について土下座した後、クルーの皆にどんな風に変化したのか聞いた。ついでに絵も見せてもらって、自分が人狼になった時の様子を教えて貰った。

ヘッタクソで子供が書いたような絵だったけど、話を聞いてるうちに自分の体がどんな風に変わったのかちょっと分かった。ちなみに夕べの記憶はホントに何もないです。


手が足首に届くくらいってどーゆー事なの。絶対動き辛いだろ。それ以外はよくある狼人間の図だったよ。よくある狼人間の図ってなんだよ。


「凄かったぜぇ。オヤジに甘えてクンクン鳴いてよ、手にぐりぐり頭を擦り付けて、オヤジがどこ行くにもピッタリついて行ってなぁ」
「ただの犬じゃんそれ。私めっちゃ親父様にわんわんおしてんじゃん」
「そうなのよねぇ、オヤジさんにだけは可愛い犬だったのよ。でも人の夕食に手を出したり、尻尾を踏んだヤツを追いかけたり、あんた凄かったんだからね」
「ごメーワクおかけしました」


摘み食いとかしてたのかよ。最大限肉とか魚を食ってまだ人のモンに手出ししてたのか。ルフィじゃあるまいし。ルフィいまいくつになったかな。


「そういえばよ」
「うん?」


戦闘員のユエンが、酒を片手に首を傾げた。


「人狼になる時の感覚を覚えてンなら、もしかしたら自分で変化することもできんじゃねえの?」
「⋯⋯んー?」


私も筋トレ用の瓶を片手に首を傾げた。


人狼になるときの感覚は、意識が落ちるのと果てしない空腹感だ。空腹感なんて自分で出せるもんじゃなくね?


「⋯⋯お腹が空く感じがしたぐらいなんだけどな」
「腹減ると人狼になるの、お前? そうなる度に喰われちまうぞ、俺ら」


食わねぇよって返せないんだよね、悲しい事に。







毎回満腹になるまで食べるから、腕もだんだん太くなってきた。

筋肉痛は起きてるけど、なんか脂肪がついてるようにしか思えない。


これ筋肉ついてんのかな、と思ってナースのメイリアさんに腕をむにむにしてもらったら、一応ちゃんと筋肉は発達してるらしい。軽く揉んだだけで筋肉の発達具合って分かるもんなのかな。


でもやっぱり力が無いから、このまま筋トレを続けるようにする。能力を使うのはそれからでもいいよね!


って思ってた時間が私にもありました。そしてその時間は3時間くらい前に吹き飛びました。


「おい名無し」


名前を呼ばれたので振り返ると、そこに居たのはバナ⋯⋯もといマルコだった。


「なに?」
「ちっと俺と来い。今から練習するよい」
「⋯⋯え?何の?」
「能力の特訓。お前はゾオン系だから、能力の使い方は俺が教えることになってんだい」
「へー⋯⋯あの、私普通に筋トレを多くやった方がいいと思うんだけど⋯⋯」
「基礎的な力を強くしたところで、能力が使えなきゃ意味がねぇんだよい。さっさと能力の使い方に慣れた方がいいんだい」


さっきまでの能力の特訓は後ででいいやーという考えをスパーンッ! とぶった切られてちょっとショック。

ていうか1か0かしかないような能力なのに使えんの? 能力使うと理性無くしちゃうじゃん。

私の訝しげな表情を無視するように、マルコは私に「ほら行くぞ」と声をかけてから背中を見せた。
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