海賊
□狼の反省
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厨房には誰もいないようなので、勝手に入って探すことにした。
食堂と厨房は繋がっているため扉はないが、食堂のノブも例に漏れず届かなかったからホント無くて良かった。
桶の近くにコップが置いてあったから、多分これが飲み水なんだろうと踏み、洗剤とその桶の水を使って洗った。
前に見た漫画で、手を洗わない不潔な状態のまま入ってきた客に激怒したイタリア人シェフの話を読んだ事があるから、料理人にとって衛生問題は普通の人より大事な事なんだろう。
モビーディックに来てから3日経ったが、島に到達した覚えはない。そこらの海に捨てていない限り、この船のどこかに必ず酒の空瓶があるはずだ。
あっでもガラスだから、砕いて溶かして別の物に加工するとか、ありえなくもないか。
なんて事とかを考えながら探し回り、冷蔵庫の近くのゴミに、空瓶入れがないか見ていたその時。
ガスッ。
右斜め前から聞き慣れない音を受け取り、髪が弱い風を受け取った。
「⋯⋯⋯⋯」
ほんの少し視線を上げただけで衝撃的なものが視界に入り、動きと思考が停止してしまう。
私の頭のすぐ横に突き刺さっていたのは、刃が鈍く銀を放つ、大きめの牛刀であった。
一歩間違えれば死にかねないそんな諸行に鳥肌が立ち、私は脂が切れた機械のように、ぎ、ぎぎ、とぎこちなく首を回す。