海賊
□狼は変革を決意する
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私が名無しという名前を貰ったのは何のためだ?
前回の平和ボケした世界での考え方を捨てなければ、生きていけないかもしれないと思ったからだ。
私は死にたくない。一度死んでしまおうと身を投げたが、死ぬ直前の恐怖は忘れられなかった。
今でも思い出す度にゾクッと背筋が冷える。
体の芯は熱く鼓動を響かせ、そのくせ全身がひんやりと冷え切っていた。あんな思いはもうしたくない。
では死なない為にどうすれば良いか?
白ひげ海賊団の一枚岩っぷり、そして個々の実力の高さからして、船長たる親父様や隊長たちはその存在自体が強固な砦と化している。
彼らがいれば、そんじょそこらの障害では揺るぎはしないだろう。
だけど、私自身が一人になったら?
何かの弾みで、たった一人戦わなければならない状況に陥ったら?
敵が武器を持って襲い掛かってきても、私はノロい足で逃げるしかできない。戦う術どころか身を守る術も持っていないのだ。
それではいくら砦の中にいたって、万が一が消えなければ意味がない。危険はいつでもすぐそばにいる。
そうでなくても水辺という危険地帯にいるのだから。
でもぶっちゃけた話、私めっちゃ嫌いなんだよね、運動。
足は遅いし筋力はないし反射神経は鈍いし、文系にはかなりツライ教科だったよ。なのに小学生から中学生まで6年間運動部っていう。
めちゃくちゃ気は乗らないんだけど……まぁ死ぬよかマシだからな。
というわけでゴートゥーダディズベッドルーム。
「親父様、よろしいですか」
「ん、入れ」
無理でした身長的に。
全力で背伸びしてノブに指掠めるくらいとか恥ずかしすぎる。丁度通りがかった他のクルーに開けてもらったのも恥ずかしかった。しかもちょっと笑ってたし。親父様も笑うのやめて。やめてよ。やめてってば。やめてって言ってるでしょ!