海賊
□狼は雨中に夢を見る
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「あら⋯⋯雨降ってたのね」
手を繋いで部屋を出ようとする直前、メイリアさんがそう呟いた。
部屋の外は通路で、入り口の真正面にある窓から見てみると、確かにしとしとと雨が降っていた。
既に日も沈んだ暗い海がさらさらと柔らかく鳴く。こんなに優しい雨は、前回の人生以来だ。
「珍しいわね、こんなに落ち着いた雨なんて」
「この辺りはやっぱり嵐の方が多いんですか?」
「ええ、この辺りは雲一つなく晴れるか、酷く荒れるかのどちらかなの。ていうか、敬語はやめてちょうだい。何だか気を使うわ」
「⋯⋯分かった」
他愛もない会話をしながら、木造りの通路を進む。
メイリアさんは知的で優しく、子供の私にも分かるように話をしてくれた。
頭の中は15歳のままだから、普通に話をしてくれても一応受け答えはできるけど。流石に8歳児が15歳らしく話したらおかしいか。
私多分前回の8歳の頃こんな落ち着いてないと思うぞ。11歳くらいになってようやく読書するような大人しい子になった気がする。
「⋯⋯メイリアさん、この船大きいね」
どこまでも続いているような通路を見て、そう言う。実父の船は、流石にここまでデカくなかった。
「船長を見て分かるでしょう? あの人があんなに大きいから、船も普通より大きくなければならないのよ」
「そっかぁ」
まぁそうだわな。でも医務室の扉小さそうだったよ。
話してる最中、色黒で癖のある黒髪を伸ばした、髭の男とバッタリ会った。