海賊

□狼は迷い子
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本日は晴天なり。

この地域は酷く荒れるかカラッと晴れるかのどちらかしかない。天気が荒れる前に、早めに抜ける予定でいた。


「⋯⋯ん?」


白ひげ海賊団船員マルコ。

まだまだ若い青二才の彼は、動物系の能力者であるために目が良い。
遠くに現れた船の違和感に気付いたのも、恐らく彼が最初だろう。


「⋯⋯何だよい、ありゃあ⋯⋯!」


目を凝らしてみると、至る所に人間の死体がゴロゴロ転がっている。動く者は今の所見えない。

明らかにゴーストシップだが、更に近付くにつれて死体の状態に鳥肌がたった。鳥肌、文字通り。


同業者との潰し合いでゴーストシップになるのはありうるが、だとしても何故、死体は肉を失い、内臓を晒しているのだ。

死体は、寧ろ残った肉の方が少ない。まるで獣に食い殺されたかのようだ。

明らかに異常である。


「オヤジ! あれは⋯⋯」
「騒がなくても分かる。ありゃァ海賊同士の潰し合いの結果じゃねぇ」


あまりの異常さに寒気すらしたマルコは、敬愛する父の元へ飛んで行った。
白ひげも警戒するようにゴーストシップを睨んでいる。


「どうする?」
「どうもしねぇよ、予定にあった通り、早めにここを抜け出すぞ⋯⋯ん?」


その時である。

血だまりと死体で生々しく彩られた船が、動き出したのだ。

正確には、船の中にいた子供が、だ。


「ガキ⁉」
「あんな状況でどうやって生き延びたんだ⁉」


にわかにモビーディック内がざわめく。


子供はみすぼらしい服を乾いた血で黒々と汚し、黒髪はボサボサで綺麗とはお世辞でも言えない。
この距離では男か女かもわからなかった。

子供は白ひげ海賊団が見守るなか、ふらふらと船の手すりに立ち、その体がぐらりと落ちる。


ボシャン。


「・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」


何の躊躇いもなく海に身投げした子供に、驚きと焦りの叫びがあがる。

小さな水飛沫を上げて海に還る子供を追い、マルコは魚人のクルーをがっと掴んで飛び立った。
大雑把な落下地点に、急に連れ出されて驚いていたクルーを落とす。クルーはすぐに状況を把握し、潜って子供の後を追った。
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