太陽に焦がれた人魚の話

□地上を行く人魚
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「初めての海の外はどうじゃ?」


感動で何も言えず、ただシャボンディパークを食い入るように見つめていた私に、ジンベエ親分がそう聞いてきた。

胸がいっぱいになっている私には、ジンベエ親分に向き直る余裕すらない。憧れた世界を目に焼き付けながら、ジンベエ親分の問いに答える。


「⋯⋯凄い、です。本当に世界は広い、私たちの見たことのないものがたくさんある! 姫さまにも、いつかお伝えしたい⋯⋯!」


そしていつか、姫さまにも海の外を散歩していただきたい。

ただでさえ酷く狭い世界に住まわれているのだから。







バブリーサンゴを使って生み出した、シャボン玉の中に体をぐっと入れる。

リュウグウ王国では基本的に水中生活だったが、しらほし姫さまのいらっしゃる硬殻塔に行くとなるとそうは行かない。日常的にこういうことをしていたため、結構この作業は手慣れている。


さっと船から降りて島に降り立ち、船上に立つジンベエ親分に一礼する。


「ここまで送っていただきありがとうございます、ジンベエ親分!」
「これぐらい気にせんでええ。これからの旅で無茶だけはするんじゃないぞ」
「はい!」


ジンベエ親分は軽く手を上げ、船員に出港の指示を出した。

赤い太陽のマークが遠ざかるのを見送り、私は島の中へと歩き出した。歩くといっても、私の下半身はヒレだから泳ぐっていうのが正しいけど。


まずはどこへ行こうかなぁ。


とりあえず、近くに酒場があったので、島を回る順番を決めたり食文化を見てみたりしよう。
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