太陽に焦がれた人魚の話

□魚人島から地上へ
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遥か太古の昔。

母なる海より産まれた生物たちの中に、人魚と魚人という、半人半魚の生物が誕生した。

その一部は海の中でも冷たい水を好み、日の当たらぬ海で生活することを決めた。


長い年月を冷たい水とともに生きることにより、彼らの体は水と溶け合い、同じ温度で触れ合えるようになった。


それは、地上の者と触れ合えぬことと同義。

太陽の温もりは、彼らには熱すぎた。


かくして、彼らは母なる海とともに生きる体と引き換えに、海の外でしか生きられぬ者には近付けない、ある種の呪いを手に入れた。


海に愛され熱に触れられぬ人魚と、海に嫌われる悪魔の加護を受けた、海を愛する人間。


奇しくもこの二人は、報われぬとわかっていながら惹かれ合う運命にあった。


それは神の悪戯か、はたまた悪魔の巡り合わせか。
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