新・海賊夢

□出会い。
7ページ/7ページ

「お前、これからどうするつもりだ?」

前振りもなく突然白ひげが口を開いた。えっ全然考えてないこと聞くのやめて。現状を受け止めるのに精一杯だよ。

「……うーん……、この船からは、降りたいです」

もう海賊はこりごりだ。十分すぎるほど人生をめちゃくちゃにされた。
それに、……多分私はカニバリストだ。人間を見てるのは辛いし、向こうもこんなめんどくさいやつの面倒を見るのは嫌だろう。

「そういうわけにゃいかねえな」

えっ。

「お前が船長から与えられた果実は十中八九悪魔の実、船での一件も能力の暴走が引き起こした事故によるものだろうよ。お前が暴走する可能性がある限り、周りに人間がいる環境は危険だ。だがその年では、協力者なくして生きていくこともできねぇだろうぜ。
おれたちゃおめェを見つけて手当てした手前、責任ってモンがある。いつまた暴走をするかも分からん、得体の知れねぇ能力者をナワバリに放つわけにはいかねぇ」

ああ〜たしかに……もしこのままどこかで降ろされて、また暴走して規模のでかい事件を起こそうものなら、多分この人たちは責任を取って私を殺さざるを得ないのだろう。いやですまだ死にたくない。
だとしてもどうしろというのだ。一人では生きられない、かといって誰かといると遅いかねないときたら、私は一体、どうしたらいいのだ。生きるのってこんなに難しい話だっただろうか。おっ死ぬしかねぇな?

「……どうしたらいいんでしょう」

思わず口走ってしまった。色々考えを巡らせようとするも、上手いこと身を落ちつけられるような案は浮かばない。二進も三進も行かないとはこういうことだ。詰んだなかっこ確信かっことじ。

「ガキのする顔じゃねぇなァ……安心しろ、この船でおめェを傷付ける人間はいねェ。それはお前自身もだ」
「……え」
「おれんとこは大所帯でな、腕っ節がある奴らが揃ってる。つい最近一人で歩けるようになったような小娘一人が暴れようが、痛くも痒くもねぇ連中ばかりだ。その小せえ体で減る食い扶持も微々たるモンだしな」

白ひげは身を乗り出すと、大きな指先で私の頭を撫でた。体格差がありすぎて首が撫でられるたびにぐりぐりと押し込まれる。いたい。

「しばらくはここに置いてやろう。能力の制御ができるまでは離してやらねぇぞ、覚悟しろ」

私の頭をグリグリと撫でていた指が遠ざかる。私は少しふらつきながら白ひげを見上げ、深く頭を下げた。

「……ろくなことは何もできないけど、一生懸命働きます。よろしくお願いします」

掃除洗濯片付け程度なら、私にだってできるだろう。どのみちこの世界のことで私が分かることは本当に微々たるものだ。アニワンちょいちょい見てた程度の小娘では一般常識以上のことを覚えない限り、一人で生活するのも難しいだろう。
となると、余裕があると言ってくれたならここしかあるまい。この海賊団はしばらく頼れそうだ。一般社会から弾かれた異分子的な連中も多かろうが、背に腹は変えられない。言葉は悪いが、生き残るためなら冷静にものを見る目は必要だ。

「名前がねぇならつけねぇとなぁ……、ローリス、ローリスにしよう」
「ローリス……?」
「おれの娘の名前だ、その名をよく覚えておけ」


こうして私は、かの四皇白ひげ海賊団に入団したのだった。
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ