太陽に焦がれた人魚の話

□地上を行く人魚
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「前回の商品はあまり良いものではなかったアマス。今回はまだマシなことを期待しましょう」
「全くだえ。今度は巨人が欲しかったのに、面白くもない人間ばかり出てたえ。お母さまもこれの替えが早く欲しいでしょうに」


男の天竜人が、後ろを歩く男の足を蹴った。

蹴られた男の人は、少しふらつきながらも何の抵抗も示さなかった。手錠に繋がれた両手は固く握り締められている。


一歩間違えたら私もあんな風に⋯⋯。


基本的に、人魚は魚人島以外にはいない。

魚人と違って、人魚はよく言えば穏やか、悪く言えば戦うことを恐れる種族だ。

タイヨウの海賊団に所属するアラディンさんとかはこの際省く。あの人過去になんかあったらしいし(さすがに聞かないけど)。

美醜はそれぞれだと思うけど、まず人間社会で人魚はかなり珍しい。だからオークションで値が張る。


自己防衛なら充分なつもりだったが、あんなものを見てしまえば流石に怖い。鏡を見ずとも、自分の顔が青ざめてるのはわかる。


天竜人が立ち去るのを見て、私もすぐにその場から離れた。

怖いよ人間怖すぎる‼ ウチの国に奴隷文化とかないからめちゃくちゃ怖い! 人間怖い‼


シャボンディ諸島は憧れのシャボンディパークがあるけどここはダメだ、魚人にとっては無法地帯にしかならない!

遊園地ならここじゃなくても他の場所にあるだろうからこの島は諦めてね! あああ無理ヤバイちょう怖い姫さまに癒されたい。


ていうかあれ見ただけでもうわかったわ。ヒューマンショップとかオークションとか無理。怖すぎていけない。アレも商品? とか思われたら私怖すぎてガチ泣きしちゃう。無理。


時刻は現在15時14分。
ホテルを取ったほうがいい時間でもなければ、この島に滞在し続ける理由もない。次はどこへ向かおうか、悩みながら海辺へ向かう。

マリンフォードの近くを通ってグランドラインを逆走してみようか、それとも新世界の島々を回ってみようか。


「うぅん、どっち行こうかなぁ⋯⋯」


やっぱりそこまで危なくないところがいいと思うんだけど、老人や子供のことを考えたら近場で安全なところを見つけたいしなぁ。

のんびりと海に向かっていたが、ほんの少し暗い路地に近付いたところで。


「キャっ⋯⋯⁉」


左手首を、大きくて節くれだった浅黒い手が、がしっと掴んだ。

私が驚いている間に、その手に強い力が加えられ、私は簡単に薄暗い路地の中に引きずり込まれた。
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