太陽に焦がれた人魚の話
□地上を行く人魚
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地図で次に行く場所を決め、すっかり冷めたパスタをさっさと食べ進めた。湯気は収まったものの、私には十分熱かった。
相変わらず妙な視線は健在だ。一応言っとくけど、私を売ったらまぁ良い値にはなるかもだけど(女の人魚だし)、捕まえられるかどうかは別なんだからね。
「ご馳走様。お代はこれでいい?」
カウンターに置いたお金を一瞥し、おじさんは私の方を見た。
睨みつけるような印象を受けるけど、顔の造形がそんな感じってだけで、別にそんなつもりじゃないんだとすぐに分かった。
「⋯⋯⋯⋯一応教えてやろう。この島には今天竜人が訪れている。周囲には気を配った方がいい」
おじさんはそう言いながらお金を回収したかと思うと、三角形の形をした物を置いた。
紙に包まれたそれを開けてみると、中には何種類もの野菜が挟まれたサンドイッチが詰め込まれている。
思わず顔を上げておじさんを見ると、そっぽを向いてブスッとした顔が赤く染まっているように見えた。
「あーあ、出たよ! オヤジの美人におまけする癖!」
「そうやってすーぐ女に騙されてんのに、本当飽きねぇよな!」
「すっこんでろお前ら余計なお世話だ‼」
「うわっビックリした」
飛んで来たヤジにおじさんが大きな声を出して、さっきの態度との変わりようにビックリした。
サンドイッチはありがたく頂いていくことにした。
野菜たっぷりでカリカリに焼かれたパン、しかもタダ!こんなの受け取らないわけがない。
「ありがとおじさん。またこの島に寄ることがあったら、このお店に来るね」
お土産を手にとってウインクぱちん。おじさんの顔がさらに赤くなったのを確認して、店を出た。
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「これお願いします」
ショールを手にした私はそう言う。店員のお姉さんはとてもにこやかに対応してくれた。
私は買ったショールを頭にかぶって顔を隠し、狭い路地を選んで進み出す。
これから何をするのかというと、こっそり隠れて天竜人の様子を見に行くつもりだ。
オトヒメ王妃と、ミョスガルドだっけ?あの件は私もその場にいたから知ってる。
あれがきっかけとはいえ、私たちの敬愛する王妃を侮辱したことを考えると、彼らへの印象はすこぶる悪い。
シン、としている場所を探せば、天竜人は簡単に見つかった。
あちらからは見つからないように物陰に隠れ、身を低くして彼らの行進を眺める。
もちろん、彼らの様子は、見ていて気持ちのいいものではなかった。