海賊

□狼は困惑する
3ページ/7ページ

「うぁ〜⋯⋯」


倦怠感が辛すぎてぐったりと呻く。

力が入らずに、足に投げ置いた腕がずるりと落ちて、鎖が耳障りな音を立てる。
言わずもがな、海楼石だ。


鎖に繋がれて2日、海楼石に動く気力を奪われて、大人しく船に揺られていた。


「くっそ⋯⋯駄目だー気持ち悪りぃ⋯⋯私前回の人生では乗り物酔いするタチだったんだぞ⋯⋯モビーでは部屋に引きこもってても筋トレしてたけど、こう動けなかったら普通に酔うぞ⋯⋯リバースしてもいいってのかあのクソ狗が⋯⋯」


一応分かると思うが、クソ狗とはサカズキの事だ。
サカズキは正義の、私は親父様の狗だから、顔をあわせる度にお互いに狗だなんだと罵り合っている。

今はこうして少しでも乗り物酔いの気持ち悪さを和らげるために、一人でぶつぶつ喋ってるわけだけど、これ多分そう長くは持たないな。


呻いたり壁に向かってぶつぶつ話していると、船が止まったことに気付く。


外からはざわめきが漏れ聞こえ、足音が慌ただしくなった。ついでにこちらにも近付いてくる足音がある。

さすがに何人の足音か、なんて分かるほど耳が良いわけじゃないが、近付いてくる足音がズレているので、少なくとも一人ではないようだ。


少し上を向いて、深く空気を吸い込む。嗅覚は最近覚えた嫌な匂いを嗅ぎ取った。

重っ苦しい扉が開き、男が二人現れる。


「気分はどうじゃ、駄犬」
「最高だよ、船酔いで気分が悪いのにムカつくアンタの顔見なきゃなんねーとかさ」
「嫌みばかり口の減らん奴じゃのぉ。だがいつまでその虚勢が続くか見ものじゃ」


馬鹿にしたように笑うサカズキの言葉に、イライラが湧き上がる。

毎日毎日、飽きもせずに罵倒して親父様の暴言吐きやがって、そんなんで洗脳されると思ってんのか? 残念、逆効果に決まってんだろ!
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ