dream

□裏作品
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 何もかもが、違って見えた。

「エルミナ…愛してる」
 ベッドの上でそう囁かれて抱きしめられていても、これから何をされるのかは知っていた。
 知っている…つもりだった。
 でももうそれで構わなかった。
 その覚悟がないならとっくにこの部屋から逃げ出している。…何をされてもいい。この男の傍にいたい。
 しかし、ライトニングの予想に反して男の手は優しかった。
 服の上から強く抱きしめて何度もキスを繰り返す。浅く…深く…。しつこくもなく乱暴でもなく。初めての感覚に呑まれそうになりながら、顔を離してライトニングが呟く。
「ん…ッ、遊んでないんじゃなかったの?」
 軽く笑って男は答えた。
「そんなに上手かったか? 光栄だな」
 楽しそうに笑って服を捲し上げながらロックオンが服の中に片手を入れてきた瞬間、ビク…とライトニングが身体を固くする。
「……」
 一瞬手を止めた後、軽く笑ってロックオンが身体から手を離した。
「灯り消すから少し待ってろ」
「…別に消さなくても平気。あなたのやりたいようにしてくれていいから」
「強がんな。慣れてるかどうかなんてすぐにわかる」
「…………」
 完敗だった。これ以上強がって経験がある振りをするのもかえって恥を上塗りするようなものだ。しかし…かといって処女でもないのだが。





 灯りが落ちて薄暗くなった部屋で、器用に服が脱がされていく。
 なるほど。これは確かに明かりがついたままだったら憤死しそうなほど恥ずかしかっただろう。今更ながらロックオンの気回しに感心しつつ、気になって訊いてみた。
「…男の人は…見えなくてもいいの?」
 子供のような質問に流石のロックオンも声を出さずに思わず笑ってしまう。表情が見えなくてよかった。どうやら、ライトニングはもう完全に開き直って強がることをやめたらしい。
「まだ、見られたくないだろ?」
「…………」
 自分も上半身だけ服を脱いでからゆっくりと彼女の身体をうつ伏せにする。無抵抗でされるがままになっている彼女の耳元で囁いた。
「何も心配しなくていい。…愛してやるだけだ」
「………ッ」
 息を飲んだライトニングの耳にそのまま軽く口づける。硬直している肩を撫でてやりながら、キメの細かいうなじに舌を這わせた。
「………ぅ……」
 思わず声が出そうになって、ライトニングが耳まで真っ赤に染まる。信じられない状態だった。下着だけの格好で体を触られているのに、全く嫌悪感がないどころか安心感すらあって。
 背中を撫でてくれるロックオンの大きな手が、暖かい。首元から背中にかけて何度もキスを落としながら少しずつ下りていく。
 背中に唇が当たるたびに彼の柔らかい髪が肌に触れて、気持ちよさに全身の力が抜けていった。
「…外すぞ?」
 下着のホックに指をかけた状態で言われて、小さく頷く。瞬間、胸の締め付けが緩んだ。裸にされる感覚に小さく息を飲んで軽く体を起こしかけた瞬間、暖かい大きな手で包むように胸に指が絡みついた。
「……ぁ……………」
 軽く揉まれて、固くなった先端を指先で弄ぶようにいじられる。危うく漏れそうになる声を身を固くして堪えているライトニングの身体を背後から抱きしめて、密着した状態で胸を揉み続ける。不意に男が耳元で囁いた。
「無理に抑えなくていい。俺しか聞いてない」
「そん…なこと言っても…ッ」
 恥ずかしいものは恥ずかしい。しかし、指で乳首を摘みあげられて甘ったるい声が喉の奥から漏れる。
「…ぁあッ! …ん……ッ」
 胸で弾けるような初めての感覚にきつく目を瞑った。
「ゃぁあ……ッ! ぁん…ッ」
 延々と愛撫されて徐々に自分の声が気にならなくなっていく。抱きしめられている背中が暖かくて、肩元に触れる彼の髪が柔らかくて。
 全身が愛されていて。気持ちいい。
「……ふぁ…ぁああん……ッ」
 男の人とするのがこういうことだとは思っていなかった。物のように好き勝手な体勢にされて、押さえつけられて乱暴に突っ込まれて終わるまでひたすら激痛に耐えるだけの思い出しかなくて。





 やがて、そっと彼女の身体をベッドに押し倒すと、うっすら開いた瞳から紅潮した顔を透明な物が流れて、窓の明かりに照らされて光っていた。
 少し驚いて軽く指で拭ってやりながら、ロックオンができるだけ優しく訊く。
「…悪い、辛かったか?」
 無言で首を横に振る彼女に彼は続けた。
「辛いならまた今度心の準備ができてからでもいい」
「いいの……ッ。…嬉しかった…だけだから……ッ。もっと…ニールが知りたい…。だから…最後まで、して」
 とてつもない威力の殺し文句だった。薄暗い部屋に光るうるんだ涙目で見つめながらそんなことを言われて、一瞬理性がぶっ飛びそうになる。狙い撃つのは本来自分の専売特許だというのに。というか…十代の頃なら抑えられなかったかもしれない。
「…男冥利に尽きるな」
「え? どういう……」
「いい。力抜いて楽にしてろ」
 頷いて身を任せてくれたライトニングの脚をそっと開いて内股に手を這わせると、軽く息を飲む音が聞こえてきた。
 再び少し体を固くしてすくんでいるライトニングの下着にそっと長い指を滑り込ませる。既に充分に濡れていたそこを軽く弄ると、悲鳴のような喘ぎ声が上がった。
「ぁあ…ぁッ! …ッ!」
 濡れていることに驚いて泣きそうな顔をしているライトニングに構わず下着を脱がせる。
 そっと脚を開かせて自分の身体で固定してから、中に指を入れた。
「……ッ! ああぁッ!! や…ッ、ぁああんッ、そこ…ッ、ゃだ…ッ」
 水音に憤死しそうになりながら喘ぎ続けるエルミナの声を楽しむように、男の指は敏感な部分を弄りながら、身体の中をかき回していく。





「あぁぁ…ッ! ゃあ…んッ、ん…ぁあッ」
 溺れていくようだった。
 敏感な場所を時間をかけて延々と弄られて、気持ちよさに何も考えられなくなっていく。胸の中が締め付けられるように切なくて。頭の中が真っ白に染まって。
「も…ゃめ…ッ、ぁ…ぅ…ッ」
「イケそうなら無理に我慢しないで一回イっとけ」
 そんなことをサラリと言われても困る。
 わけがわからないまま胸の中で何かが追いつめてくるような感覚が走る。目の裏がチカチカして。
「あ…ッ、ぁ…ぁああッ、…あぁッ! ああぁぁッ!!!」
 軽くイってしまって溶けた眼で放心している彼女の髪を撫でてやりながら、男は言った。
「そのまま、力抜いてろよ」
 手早くズボンと下着を脱いで、コンドームの袋を口で器用に中身を傷つけずにあける。
 これが世に出て三世紀も経つのに、人類は結局これ以上優秀な避妊具を開発できなかった。とはいえ、この三世紀で質ははるかに向上し、特にここ百年の避妊失敗例はゼロになったとさえ言われている。
「いれるぞ。痛かったら言えよ」
 頷いたのを確認して、そっと自身のものをあてがう。幸い、彼女の緊張は綺麗にほぐれているようだ。狭い場所を押し広げるように少しずつ入れていくと、大きな声が上がった。
「……ッ、ぁ…ぁああああああッ!」
 ギュッとシーツを掴みながら、耐えているライトニングの手を自分の首に回してしがみつかせる。痙攣するように何度も細かくひくつきながら、彼女の身体は中に入ってきたロックオン自身を強く締め付けてきた。
「ぁ………ぜ…全部?」
「…ああ、入った。痛くないか?」
 訊きながらも、ロックオン自身少しホッとしていた。どうやら初めてではなかったみたいだ。それならさほど痛い思いはさせずに済む。
 可哀そうなほど緊張しているから、この瞬間の激痛が心配だった。でもこれなら大丈夫そうだ。
 彼女はゆっくりと首を横に振った。
「……信じられない…」
 全然痛くなかった。彼女の経験上、この大きさを突っ込まれて痛くないはずなどないのだが。耳元でロックオンが囁いた。
「動くぞ」
「……ッ、ぁ…」
 ゆっくりと腰を引き、ゆっくりと打ち込んでいく。慣れていないと膣内では感じにくいため、ここから先は手早く終わらせてやりたいところではあったが。
「……ぁ…ぅ…ッ、ぁあん…」
 中を締め付けながら甘ったるい声で鳴かれて、ロックオンが軽く息を飲む。冷静に考えてみれば、ロックオン自身もかなり久しぶりだ。
「……悪い、我慢できなくなってきた」
「ぁ…や…ッ、な…」
「少し早くしていくから、痛かったら絶対に言えよ」
「そんな…の、言ったって…」
 やめられるわけがないのだから意味なんてないだろうに。彼女の経験上、何万回泣き叫んで懇願したところで途中でやめた男はいない。しかし、ロックオンははっきりと言った。
「俺がイク寸前だろうがなんだろうがそん時は言え。大丈夫だから」
「…………ッ」
 窓からの星明りでうっすら見える、男の顔は優しく笑っていた。
 思わず笑い返して頷くと、男が抽送を再開した。
「……あ…ッぁああッ! ふぁ…ッぁああッんぁ…ッぁああああッ!! ぁあああぁあッ!!!」
「エルミナ…」
「んぁ…ぁ…ニール…ッ! ぁああッ!! ぁ…あぁぁッ!! ぅ…ニール……」
 見下ろすと、薄暗い部屋にくっきりと浮かび上がる透き通るような白い肌を晒してライトニングが紅潮した顔で喘いでいた。
 薄く開いた唇から名前を呼ばれるたびに、男の中で何かが満たされていく。
 本能に任せて何度も激しく抽送を繰り返しながら、貪るように食い尽くす。
「ああぁぁぁッ!! や…ぁ、ぁあああああああッ!!」
 甘ったるい絶叫を聞きながら絶頂に達して、男はゆっくりと自身のものを引き抜いた。





 ぐったりと崩れて荒い呼吸を繰り返しながら戦慄いているライトニングの身体を抱きしめて、何度も髪に軽くキスを落としながら髪を撫でる。
 生きている。今、この瞬間が。
 心も体も満たされて、腕の中に彼女を抱いて。これ以上の充足感はなかった。
 身体の奥から湧き上がる感情がそのまま喉を通って音になってこぼれる。
「愛してる…」
「……ニール…」
 熱に潤んだ瞳でロックオンを見上げながら幸せそうに微笑んでいるライトニングに、ロックオンは深く口づけた。



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