dream

□第二十二話-儚くも永久のカナシ-
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 ロックオンの怪我は、思っているより深刻だった。
 効き目の負傷、全治三週間。
 にも関わらず。
「どういうことなの? 治療拒否って」
 睨みつけてくるライトニングに、軽く笑ってロックオンは言った。
「そのまんまだ」
「敵がいつ来るかわからない状況じゃ寝てられないって話なら、お門違いよ」
「それだけってわけでもないさ」
「?」
「…俺が寝てると、気にする奴がいる」
「何があったの?」
 ロックオンの短い話が終わって、ライトニングは小さく息を飲んだ。
「ヴァーチェが…システムエラー…? そんな…」
 クリスとフェルトが構築していたシステムは、作業を手伝った際に何度も目にしていた。
 システムに不備はなかったはずだ。
 まさか…。
「ティエリア…」
 呟いたライトニングの顔を見つめて、ロックオンが静かに訊いた。
「そっちは大丈夫だったのか? システムがダウンした時」
「……。私は平気。それより、ティエリアは大丈夫なの?」
「そうだな…。ああ見えて、あいつは脆いからな」





「ロックオンは?」
 短く訊いてくるアレルヤに、苦笑してライトニングは答えた。
「ティエリアの所へ行ったんじゃないかしら」
「そっか…」
 心配そうに俯いているアレルヤに笑顔で言ってやる。
「君も相変わらず心配性よね」
 軽く笑ってアレルヤが返す。
「ライトほどじゃないよ」
「そうね。お姉さん、いつもみんなのことが心配で心配で」
 冗談みたいに言うライトニングに苦笑しながらアレルヤは言った。
「はいはい。すみません。心配ばかりかけて」
 くすっと小さく笑って、ライトニングが透明な声で言う。
「アレルヤ」
「? なんですか?」

「強くなってね」

「…ッ」
 思わず絶句したアレルヤに、ライトニングが笑顔で続ける。
「言っておくけど、私たちが滅ぶかどうかは誰かが決めることじゃないよ。イオリアの計画に入っているかどうかなんてこの際関係ない。私たちが生き残るかどうかは私たちが決めればいいのよ。生き残ってやりましょ。とことんまで。世界の答えが…聞きたいんでしょ?」
「ライト…」
 アレルヤはまっすぐな眼で、ゆっくりと頷いた。





 地上でも国連軍は動いていた。
 トリニティもついに追いつめられているらしく、報告の内容が事実なら、いつ鹵獲されるか撃破されてもおかしくない状態だった。
 加えて、トレミーにもいつ国連軍がまた攻めてくるかわからない状況。
 そんな状況にもかかわらず。
 宇宙に消えていくGN粒子の光を見送りながら、ライトニングが呟いた。
「どうしてこうなるのかしらね」
 セリフとは裏腹に、穏やかな顔で笑っているライトニングに、ロックオンが静かに言った。
「今に始まった話じゃねぇだろ? あいつがきかん坊なのは」
「あら? 今回言い出したのはあなたじゃなかったかしら? 武力介入の必要があるとかなんとか…」
 確かにトリニティへの国連軍への行為に対して、武力介入が必要だと言い出したのはロックオンだったが。
「だから俺も付き合うって言ったのに…なぁ?」
 軽く笑っているロックオンにライトニングの鋭い視線が突き刺さる。
「怪我人の自覚が足りていないようね」
 ロックオンの代わりに刹那と地上へ降りると言い出したのは、ラッセと、意外にもシヴァだった。
「だからあいつが代わりに行ってくれたんだろ? 俺もそれで納得してんだ。それでいいだろ」
「兄さん…本気でトリニティを助けるつもりなのかしら」
「連中が鹵獲されたら厄介だから…とか言ってたな。ま、どっちにしてもあいつは俺らと違って元々ワンマンアーミーだ。今回も何か考えがあって行動してるんだろうぜ」
「だといいけど。地上だと好きなだけ煙草が吸えるから…とかじゃないでしょうね」
 苦笑しているライトニングに、ロックオンが楽しそうに笑う。
「かもなぁ。昨日も吸いたがってたし」
 笑いを収めてから、無表情に虚空を眺めているライトニングに彼は真顔で言った。
「大丈夫だ。ちゃんと戻ってくる。このままどっか行くような奴じゃねぇよ」
 儚い顔で笑って、ライトニングは軽く頷いた。
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