dream

□第二十話-真成-
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 ついに国連軍が疑似太陽炉搭載型のMSを投入してきた。…それも、大量に。
 地上でトリニティを襲ったそのニュースは、トレミーにいる彼らをも震撼させた。
 これからは…ガンダム同士の戦いになる。





「よぅ、ライト。久しぶりだな」
 格納庫で手を振ってくれたイアンに満面笑顔で返す。
 訊いてみると、シヴァがプトレマイオスに滞在していた間に色々情報提供して行ってくれたらしい。
「そういや、あいつはおらんのか?」
「兄さんなら、地上でどっか行っちゃったきりよん。まぁ、またフラッと戻ってくるんじゃない?」
「…結局、会えんかったか。まったく…せっかくわしが説教しといてやったのに」
 笑いながら、ライトニングが言った。
「無理無理。言って聞くタイプじゃないって。でも、ありがとね」
 軽く笑って、イアンがデータを見せながら言ってきた。
「ライト。お前の兄貴の機体を見せてもらった。正直、驚いたぞ。ライトの機体と発想がほぼ同じだ。本人が仕様書や設計書まで提供してくれたが、どうやら全部自分でやっとるようだ。ただ、装甲は向こうの方がかなり厚くなっとる。まぁ、ワンマンアーミーで活動するならそうせんとまずいだろうなぁ。一番驚いたのは機動性を高めるためにライトが昔提供してくれた技術がそのまんま使われとったことなんだが…。いくら双子でもお互い全く知らんところで全く同じ技術を開発したりするって、あり得んと思うんだが…」
 イアンの話を半分聞きながら、ライトニングの目はトリシューラの設計書に釘付けになっていた。
 やはり…兄はすごい。あれから、十年以上会わなかったうちにライトニングの技術力も飛躍的に向上していたが、彼はその上を行っていた。
「…イアン。私が提供した技術の元ネタ、前に知ってるって言ってたでしょ?」
「おお。わしがライトと一番最初に会った時に話した奴だな。あれだろ? 二十年前にニエット教授が発表した…」
 嬉しそうに話すイアンを遮るように、ライトニングが満面笑顔で言った。
「あの時は驚いたわ。まさか、私以外にファンがいるなんて」
 ふふん。と笑ってイアンが自慢げに言った。
「わしの若かりし頃の憧れじゃった。あの人の研究を聞いたときはそりゃもうわしの世界がひっくり返るほどだったからなぁ…」
「…兄さんも」
「ん?」
 少し、沈黙してからもう一度満面の笑顔でライトニングは言い放った。
「きっと兄さんもファンだったんじゃないかしら? 元ネタが同じだから、同じ発想になったのよ。…きっと」
「ライト?」
 怪訝そうな顔をしているイアンに、誤魔化すようにライトニングは笑って続けた。
「ああ、ごめんなさい。ただ、イアンみたいにわかってくれる人もいるのに、どうしてうまくいかなかったのかなぁって…。…あの人」
 察したようにイアンが頷いた。
「ああ。あれは気の毒じゃったな。まぁ、あの時代に受け入れられるには少々突飛過ぎたのかもしれん。それにしても、あそこまで叩かれるとは思わなんだが…」
 世の中には、当事者でもないのに安全なところから匿名で非難し叩き祭り上げることが好きな人間がどれほど多いことか。
 一度炎上した流れは、止まるところを知らず。その歪んだ流れは一つの幸せな家庭を破壊し、二人の人間の命を奪った。
 ライトニングが笑って言った。
「ま、イアンみたいにわかってくれる人がいるなら、少しは報われてるんじゃない?」
「なら、お前らもだろ」
「ん?」
「ニエット教授の提唱した理念をここまで立派に形にしとるじゃないか。ライトも、ライトの兄貴も」
「………」
「喜んどるんじゃないか? 教授も」
 しばらく黙っていたライトニングが小さく言った。
「イアン」
「ん?」
「ありがとう」
「お、おお。そんなに改まって礼を言われるようなことでもないと思うがなぁ」

「うん。…でも、ありがとう」

 不思議そうに自分を見つめているイアンの前で、ライトニングは静かに笑っていた。






「ライト姉さん…」
 フェルトの声に、クリスがつられて振り向く。
「ライト! ちょうどいいところに…」
 ブリッジに入ってきたライトニングが満面笑顔で言った。
「スーちゃんから聞いた。ヴェーダからのバックアップがなくなった場合に備えて突貫工事で切り替えシステムの構築してるって。手伝うわ」
 クリスの嬉しそうな声が響いた。
「助かるーーッ!」
 遠慮がちなフェルトの声が後に続いた。
「え……でも…マイスターは…出撃に備えて休んでおかないと…」
 ヒラヒラと片手を振りながらライトニングが返す。
「いいのいいの。クリス。交代するからご飯食べてきて。そのあと、フェルトね」
 嬉しそうに返事をするクリスからシステムの仕様の説明と、作業状況の説明を受ける。
「姉さん…」
 呟くフェルトの顔は、どこか嬉しそうだった。
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