dream
□第十一話-再起-
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「説得した…ッ?! あのライトニングをかッ?!」
ブリッジでラッセが目を丸くする。
リヒティがロックオンを仙人を見る目で見つめていた。
「どんな魔法使ったンスかッ?! 一体」
ロックオンの後からブリッジに入ってきたスメラギが喜色を込めて告げた。
「とにかく、これでライトニングの営倉入りは解除。クリス、至急モレノさんに連絡を」
「はいッ」
嬉しそうに返事して連絡を取り始めるクリス。
「ロックオン」
呼ばれて振り向くと、フェルトが嬉しそうな眼でロックオンを見上げていた。
「フェルト。ちゃんと渡してきたぜ」
「うん…ッ。ありがとう」
滅多に見せない綺麗な笑顔で、フェルトが笑った。
「一体どうやって説得した? ロックオン・ストラトス」
硬い声で訊くティエリアに、ロックオンが軽く笑って答えた。
「ふつーに話しただけだって。大体、お前が期限作ってから始めねぇからこうなったんだろ」
「俺は初めからライトニング・ランサーの気が済むまで待つつもりだった」
「だぁからッ! 実質はどうあれ、形の上ではお前に営倉入りくらってるライトが自分から終了宣言するわけねぇだろ。それじゃ永久に続くだろうがッ!」
フン…と、顔をそむけてしまったティエリアに、思わず苦笑が漏れる。
二人の背後にいたアレルヤが苦く笑いながら言った。
「まぁ、結果オーライってことで。ロックオン」
「なんだ?」
「ありがとう」
嬉しそうな顔に、ついロックオンの口から苦笑が漏れる。
「…ちょっと話しただけでそこら中から感謝されまくってンな…。ったく…」
スメラギも礼を言っていた。
ライトニングもえらく好かれたものだ。
それを…彼女自身がもっと自覚してくれればいいのだが。
「兄さん…」
灯りが落ちたカプセルの中で、ライトニングが静かに目を閉じた。フェルトにもらった薬のおかげで体の痛みはほとんど感じない。
先程のロックオンの言葉が、本当に兄が言いそうな言葉に思えて、傷心に焼け付くようにしみた。
そして今回のことで判明したこと。
兄は、おそらく生きている。
超人機関に残されていた顛末書によれば、兄が脱走事件を起こしたという被験体…。
そしてその事件で、彼はライトニングをつれて逃げている。
兄さんが…助けてくれた…。
被験体にされていた自分を。
助け出して、一緒に逃げてくれたんだ。
何も覚えていなかったし、思い出すこともできなかったが、それを知ることができたことが一番嬉しかった。
意識が遠のく。
子供の頃のことが、いくつも脳裏を横切った。
兄の顔を思い出すときは、いつも笑顔ばかりだ。
『また笑ってくれよ…』
そうだ。あの言葉は…確か…昔…。
「俺もたまには…手紙でも書くか」
一人酒を飲みながら、そんなことを呟いてみる。
「ロックオン、テガミ、ダレニ? ダレニ?」
狭い自室にハロの声が響いた。
思わず笑いがこみあげてくる。
「いや。やっぱ俺らはそういう柄じゃねぇよな。…ライル」
しかし、ライトニングを見ていて少し羨ましくなったことも事実。
そういえば今度は、自分が話をする番だった。ライトニングに…話してみようか。今度また、二人で酒でも飲みながら。
「…待てよ。そうなるとあいつは当然ライルの肩を持つよな…?」
その…双子の下に生まれついた者同士として。
…やっぱり、やめておこうか?
そこまで考えてしまってから、今度こそ苦笑が漏れた。
どうしてこんなに楽しみにしてるんだろう。
一人で飲む酒は前からこんなに…味気なかったか?
もっと話がしたい。
彼女と。
「ったく…。俺が撃ち落されてどうすんだ…」
狙撃手の苦笑とため息が満ちる中、ハロが楽しそうに回転しながら部屋を浮遊していた。