dream〜2nd season〜

□第六話-過去と未来と過去と-
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「敵機セッキン! 敵機セッキン!」
 ハロの叫び声が響く中、突如現れたもう一体の疑似太陽炉搭載型MSがウロボロスに撃ってきた。
『……ッ!!』
 流石に直撃はしなかったものの、頭痛に意識が持っていかれている状態で突如現れた新型機の攻撃はかわしきれず、やむを得ずシヴァは戦闘に専念しはじめた。
 普段より動けない彼を、ニールがフォローする。
 しかし緊急発進したダブルオーが戦線に加わると、後から現れた敵機はあっという間に姿を消してしまった。
 当然、彼女も回収してから。





 くすくす笑う声が響いた。
「これって絶対凡ミスでしょ? リボンズ」
 からかうような口調で言って更に笑い続けるヒリングに、苦笑してからリボンズが言った。
「…まさか、妹にそこまでするとは思わなかったよ。彼はやっぱり、面白いけど危険だね」
「ブリングがいて良かったね。けど、どうするのさ? あの脳量子波」
「簡単だよ」





「お前なぁ…」
 呆れるようなニールの声が医務室から聞こえていた。
 ふてくされた顔で壁を向いたままベッドで横になっているシヴァに、フェルトが慎重に訊いた。
「何か…欲しいものとかある? お腹、すいてない?」
「…………」
 無言で背中を向けている男に、ニールとフェルトが顔を見合わせて苦笑する。
 あの後。
 トレミーに着艦するなり待っていたイアンとスメラギに散々説教され、その後、ティエリアとアレルヤに短絡的だのやり方が酷すぎるだのと叩かれ、その全てを黙ってきちんと聞いた後、部屋に戻ろうとしたところをフェルトに捕まって強制的に医務室に連れてこられたのである。
 そりゃ機嫌も悪くなろうというもの。
「まぁ、実際お前が来てくれて助かったぜ。…俺の考えも甘かった」
「…………」
 ニールが続けた。
「お前のやり方が理にかなってたことはみんなわかってるさ。実際、昔それで一度気絶したことあるしな。あいつ」
 離れたところに立っていたライルが笑えないという顔でニールに言った。
「兄さん、なんなんだ? さっきの。脳量子波って…」
「ああ…」
 ニールが説明している間、ベッドサイドに座ったフェルトが小さな声で言った。
「何があったか、訊いていい? この前…出てた時…」
「…話したくねぇ」
 シヴァが返事をしてくれたことに少しホッとしながら、フェルトが言った。
「うん。なら、聞かない。あなたが無事でよかった…」
「…………」
「あのね、この前までアロウズにいた人から、姉さんの話、聞いたの」
「…………」
「元気にしてるって、わかっただけでも良かった」
「…………」
 すると、ベッドの上でゆっくりと上半身を起こしながらシヴァが重い表情で言った。
「元気なわけねぇだろ」
「え?」
「…聞こえてんだよ…ずっと…ッ」
「まさか…」
 フェルトが軽く目を見開く。いつの間にか、ニールとライルもこちらを見ていた。
「……あいつの声が…ッ! 今も………ッ」
 歪んだ顔を俯いて両手で隠しながら、彼は消えそうな声で続けた。
「短絡的で何が悪い…ッ、さっきなんかよりもっと酷いことになってんだよ…ッ! 一秒でも早く何とかしてやりてぇと思うのは当たり前だろ…ッ!!」
 付き合いの長いフェルトや、彼の事をよく知っているニールですら、初めて見る姿だった。
 状況が判明してから、既に数十日。その間、彼にのみ与えられた拷問のような日々が、確実に彼の精神を削っていた。
「そう思うんなら…」
「……」
 無言で顔を伏せているシヴァに、男は言った。
「知ってることはちゃんと全部話せ。妹を早く助けたいなら、仲間の手だろうが足だろうが使えるもんは全部使えって。それともお前にとって俺らは邪魔か?」
 呆然とした顔を上げてシヴァが呟く。
「………ライル」
 苦笑して、ライルは続けた。
「俺はまだお前の事をそこまで知ってるわけでもないが、正直感動したぜ。さっきのアレ、お前も妹と同じくらい痛かったんだろ?」
「………」
 絶句して誰も何も言えない中、彼は軽い口調で続けた。
「そんな悲観すんなって。助けられるさ。まだ死んだわけじゃねぇんだ」
「……ッ!」
 ゆっくりと立ち上がって医務室から出て行こうとするシヴァにフェルトが背後から声をかける。
 振り向かずに男は言った。
「頭冷やしてくる。…さっきは、熱くなって悪かった…」
 ドアが閉まった後で、フェルトが青い顔で呟いた。
「もっと酷いことになってる……て…」
「…実際たまんねぇよな」
「え…?」
 訊き返すフェルトに、部屋を出ながらライルは続けた。
「そんだけきついってことさ。兄貴にとって妹に何かされるってのは。自分にされるよりよっぽどな」
「ライル…」
 思わず呟いたニールの方を見ずに、彼は軽く言い放った。
「しかも延々頭ん中に声が聞こえてくるんだろ? 俺があいつの立場だったらとっくに気が狂ってるぜ」
 冗談のような口調でそれだけ言って出て行ってしまったライルを見送って、ニールが顔を伏せて苦笑する。
「それでも…妹が生きてるだけまだマシだ。どんだけきつくてもな」
「ロックオン…」
 重い顔でこちらを見ているフェルトに、なんとか笑ってやる。
「フェルト。ライルはああ言ってたが、今一番きついのは本人だ。なら、俺たちがへこんでる場合じゃない」
「……ッ! うん…ッ。今度は私が助ける。姉さんには、沢山助けてもらったから」
 くしゃ…と大きな手でフェルトの頭を撫でて、ニールが笑う。
「その意気だ」
 この次はバハムートで出る。
 もうハロにシールドを張ってもらいながら呑気に話すのはやめだ。
 本気でやり合わなければ彼女とは対等に話せない。そのためには…。
 ニールの正念場が始まろうとしていた。






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