桃頬と白い翼
□桃頬と白い翼 3
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それからほぼ毎日、その野球部を窓の外に見つけるようになった。
1人きりのときもあれば、3、4人の時もあった。
大分あとになってからだけど、1人で夜走っていることも知った。
暗くて、電灯の明かりを頼りにしてもほとんど見えなかったけど、なんとなくシルエットでそうだと分かった。
野球に詳しくないから、なんでこんなに走ってるのか、守備はどこなのかなんて全く検討もつかなかった。
分かるのは、その人が必死なことだけ。
真っ黒に焼けてるその顔に、俺はいつもみいってた。
自分でも知らぬうちに勉強の合間に見るのが楽しみになっていたみたいだ。
何でなのか分からないけど。
じょじょに冬が近づいてくるにつれて、その野球部は1人で走っていることが多くなった。
枯れ始める森の木々に、なんだかその姿にも哀愁を感じた。
それからしばらくして、本格的な冬が近づく前に、ぱったりとその姿が見えなくなった。
すごく気になったけど、冬が来るからだろうな、なんて考えていた。
俺はその野球部のことを何も知らなかった。
名前や学年はおろか、同じ高校なのかすら。