箱庭

□world1
1ページ/1ページ



意識が、ゆっくりと浮上する感覚がする。


嫌な、夢……。


胸の中に、ドロッとして重たい、気持ちの悪いものが溜まっている気がした。


早くそれをかき消したくて、瞼を開ける。


霞んでいる視界が徐々に開いていくことが、焦れったかった。


早く……見たい。


ほんの僅かな時間が、僕には長く感じる。



「蓮……」



完全に開いた視界いっぱい、大切な弟――蓮の顔で埋め尽くされる。


切れ長の瞳を縁取る長い睫毛に、スッと通った高い鼻梁。


艶やかな髪は、シーツに散っている。


甘い言葉を紡いで、僕を愛してくれる唇は静かな寝息を立てていた。






[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ