海の巫女
□10.共同オペ
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バサッ
突然膝に白いゴム手袋や医療服が落ちてくる
彼女に渡したのはロー、当然意味がわからないヴィラは、そのまま不思議そうな顔を彼に向けた
「オペの経験は?」
ローからの問い__
「昔に何度か…ですけど」
「速さが勝負になる助手としてこい」
素直に答えた後に待っていた彼の言葉は震撼させるほどのものだった。
あの診断書を見ると、彼の容体は自分が診た以上に悪化している。それといくつかの臓器が完全に潰れており、リゼからの臓器提供がなければ後は死を待つだけであった。
その上幸運であったのは臓器が彼の体に適合したことだ。この奇跡がなければオペさえ実行できない状況であったことは間違いない
だが…それでもこれだけの状況が揃っていても彼からの言葉は予想外で恐ろしいものだった
「でも、私は長い間……」
メスを握っていない……
自然と手が震えてくる
知識と治療程度のことが人並み以上にあるだけで、彼女は医者ではない
空れにもともと医者になるつもりはなかったため、手術は昔に何度かしかしたことがない。それも単純なものだ。
ローの経験値には到底及ばないだろう。
「無理です!できま…」
「俺が指示を出す、俺についてくればいい」
拒否する途中でローの声が重なる
彼の声は力強くそれでいて、背中を押されたような説得力を帯びている
いつしか手の震えは止まっていた
「……………………わかりました」
彼女の目にもう迷いはない