海の巫女
□8.犯人探し
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二人は人気の少ない路地裏に移動する。運よく昼間から開店している店を見つけられ腰を下ろすことができた。
「で、何してた」
「怒ってないんですか?」
意外にも一言でこのことは水に流してもらえたようだ
「確かにお前は全焼する直前の家に飛び込む馬鹿だが、怪我した足を引きずってまで町に出て、無駄なことをする女じゃないと思っているからな」
「…褒められているんですよね」
まだ節々が痛むのを感じながら説明し始めるヴィラ
「ま、それで、外出していた理由なんですけど、ただ単純に店がひとりでに炎に包まれるかなって」
「犯人を捜していたと言いたいのか」
首を縦に振るヴィラ、手には松葉杖が抱えられている
先ほどのローの発言は真実で彼女はまだ未回復の状態であり、歩くこともままならない容体である。
「あの…船長さん」
「なんだ」
「出航の日をずらして大丈夫だったんですか?謝礼を渡したくても申し訳ないんですが家が全焼した身なのでお金はなくて…」
彼女の考えはもっともだ、無償で手術した上に出航する予定日まで一カ月以上も遅らせてしまっている。謝礼を渡したくても現金はもちろんない、彼女の心は謝意でいっぱいだった
「金はいらねぇ、俺が勝手にしたことだ。出航延長も治療した患者が勝手に死なれたら俺の沽券に関わるからだ」
「フフッ…ありがとうございます」