海の巫女

□5.剣の腕
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ヴィラは下を向き続けている。

長い髪が乱れており、表情はよく見えない





「私…じゃない…」





ほんの小さな声…









様子がおかしい……

ローは声をかけようとした









ガシッ





「っ!!」





その場にいた者たち全員が瞠目させた

自分の腹をさした竹刀をヴィラが握ったのだ。






「おい…っ!!」


ローは声を張り上げる

誰もが彼女のやろうとしていることが簡単に推測できた。






「お前が…“ユリア”を…」




彼女はそのまま一言呟き、竹刀を子供の前で振り上げる。






「ちっ…」


(聞こえてねェのか!)




声をかけても返答のない彼女に舌打ちをし、ローは前へ動いた。


近くにいる子供たちは彼女の殺気で指一本さえも動かせないでいる。





「お前が!!」


「ヒッ!!!!」






ヴィラは、思いっきり竹刀を振り下ろす。相手の子供は恐怖で微かに声が絞り出た。









ガッ!!!









先ほどの数十倍ほどの音が響く。

今度は骨の音のような硬い音…









ポタッ……





「テメェ…何してる」





「ハッ…!!!」








ローの声と彼の腕から流れ落ちる血で、ヴィラは我にかえった。

彼の傷を見ればローが子供を庇い、前へ出たのは明らかだった。









「ご…めんなさい………」





震える彼女の声

自分のやってしまったことを思い、すぐさま周りを見渡す








静まり返ったその地は、多くの子供がこちらを怯え見つめていた。




「……」





自分のやってしまったことを悔やむ









「ごめん…皆…今日は終わりにしよう」






そう言いながら、己を頭を片手で抱えるヴィラ




「船長さん、ひとまず家へ戻りましょう…」


「…………あぁ」






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