海の巫女
□5.剣の腕
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避けるはずだった
相手は子どもだ、余裕
だが
「ヴィラさんに手を出すな!」
一人の子どもが彼女を庇って前へ出たのだ
きっと、このままでは彼女が危ないと思ったのだろう
「…!!」
突然入ってきた、子どもの影に、目を見開くヴィラ
(このままじゃ…!!)
ほぼ、無意識であった
グイッ
その一瞬の間では判断し動くだけでもそう簡単にできることではない
彼女は、前の子どもの右手を自分の方へ引き寄せた
よって必然的に、自分の身体が前へと出る
ガッ
鈍い音が響く
「ゔっ…」
身体が前に出た時点で予想のついたことが__竹刀が、彼女の胸下あたりにささっていた
なにも、体に入り込んでいるわけでも血が出ているわけでもない。
打撲ほどのものであろう
思わず痛みに声が漏れる
ローもその光景をもちろん見ていた。
流石に、子どもの手を引いた時点は目を丸くしたが、所詮相手の力は子どもの非力な力。
打撲ほどですむ
この後、自分が診てやればいい
そう思っていた
それは、周りの子どももそうであった
「お、お前が悪いんだからな!!」
竹刀をさした子どもが焦ったように怒鳴った
刹那____
『お前のせいで、この女は死んだんだ!!』
______
「ッ!!!!」
電流のようなものが全身を通った感覚と共に、記憶の中にある声が彼女の頭の中を貫いた
ジーッ
「…!!!」
思わずローは身震いのようなものをした
自分でも信じられない様子だ
背中を伝う冷や汗
この自分に、一瞬でも畏れの意を感じさせた
(なんだ…?)
一人しかいない
ローは、ヴィラに視線を集めた
一瞬感じたのは、彼女の殺気である
それも莫大な量の殺気
ただ事ではない
そんな予感がローの思考を巡らせた