海の巫女
□4.正体の一部
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丘の端の木の影に、静かに腰を下ろすロー。
「..........」
数人の子供達と、何やら話している彼女を見つめる。
だが、そんな一人の女と数人の子供達が遊んでいるような暖かい光景ではない
ギッ
バシッ
「たぁぁぁ!!」
「にっ.....負けるかぁ..!!!」
その数人の子供は全員竹刀を持っており、決闘のようなことをあちらこちらでしている。
ヴィラは、というとこれもまた数人の子供達の相手をして竹刀を受け止めたり、避けたりしている。
(.........)
それよりもローが気になったのは彼女の手だ。
彼女の手には何も存在しなかった。
いくら相手が子供で、彼女自身人を投げ飛ばすほどの実力をもつといっても、一歩間違えれば、竹刀で殴られ大怪我してもおかしくはない。
それにも関わらず、素手で竹刀を受け止め、平然としているのだ、彼女の動きの八割は避けるための動き
_______まるでわざと、竹刀を握ることを拒否しているかのよう___にローには見えた。
「踏み込みが甘いっ..!!!」
アドバイスなのか、やはり教える立場なのか、手順を師匠のように教え与える彼女
「よし、上手い」
ひと段落ついた所で、ヴィラがローの方を見た。
彼女は、子供達に練習をさせ自分はゆっくりとローのいる場へと近づく。
「お待たせしました」
そう言って、ローの隣に腰を掛ける
「なんだあれは、お前の餓鬼か?」
「冗談キツイです。あの子達は施設の子」
「施設?」
「えぇ、あの子達の両親は‟海賊に殺された”んです」
「……」
ローは別に言葉を失ったわけでも。驚いたわけでもない、この大海賊時代そんなことはいくらでも想像できる。
「俺が聞きてェのは.....」
「なんでそんな奴らを単なる酒屋の店主の女がどうして稽古をつけてるって?」
「..........」
ヴィラは、立ち上がる
彼女の黒髪が静かに靡く
「私、元海賊であり、元海兵であるんですよ」