海の巫女
□3.空間の違和感
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「あの.....店長」
一人の、女性店員が困ったような表情でに近づいてくる
「どうしたの?リゼ」
「あの.....今月のお給料、少し早めに頂けませんか?」
そのリゼの態度に、かすかに眉を顰めヴィラ
「珍しいわね、リゼがそんなこと言うなんて」
リゼは、この店の一番の古株で、美人で気の優しい、従業員の中でも目立った存在となっている。
そんな彼女をヴィラは、店員としても個人としてもよく気に入っており、真面目さが彼女の性格であるがため、この発言には少々驚いたのだった。
「あの、少しお金が必要になってしまって.....」
「.....まぁいいけど。大丈夫?何か‟悩み”があったら相談に乗るわよ?」
「.....いえ、大丈夫です、ありがとうございます」
話し始めてから一度も目を合わせないリゼ
「それと、今日は早めにあがりますね」
「えぇ、分かったわ」
給料袋を受け取り、更衣室へと向かったリゼ
「..........」
ヴィラは静かに目を光らせる
「どうした」
その明らかに変わった態度にローも勘付いたようだ。
「少しだけ、鎌をかけてみたのよ」
「..........」
「わざと‟悩み”って単語を大きくしてみたら、彼女の肩が微かに揺れたわ.....あの子何かあったのよ」
「あんた本当に一般人か」
その素人とは思えない探りようと、どんなことがあろうと態度を変えない姿勢や男一人を素手で倒す彼女はどっからどうみても一般人などには見えない。
「一般人ですよ、善良な市民ですよ」
「男一人、背負い投げする奴がか?」
思い出したようにローは笑みを浮かべながら 述べる。
「そ、それは忘れて下さいって.....!!」
それを聞いて、恥ずかしさで少し顔を赤くするヴィラ
「ほう……そんな顔もできるんだな」
いつものポーカーフェイスな顔が崩れ、焦った顔つきが見れたことが珍しく嬉しいのか、ローの口は弧を描いた。