海の巫女
□2.彼女の名
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「いらっしゃいませー!」
「こちらの席にどうぞー」
店内には、店主だけではなく店員らしき若い女達が数人働いていた。
思ったよりも、客がいることに気付くロー、海賊らしき男達もいれば、街人らしき人もいる。
案内された席を断り、カウンターへと向かった。
「あら、ここで良かったの?」
「あぁ、この席が気に入った」
昼間と同じ席へ座るロー
「フフッ、じゃぁ…何にする?」
「強めのを」
「かしこまりました」
すぐさま、酒を作り出す。
その手つきは、とても滑らかで次々に作業を行っていく。それを静かに見つめ、魅せられているロー。
「ハイどうぞ」
出された酒は昼間のとは違い、色や匂いが少しきつめになっている。
ローは口へと運ぶ。
「..........」
何も言わないローだが、昼間と変わらなく美味いと感じる。
「変わった味だな、初めて飲む酒だ」
「ここは、比較的普通の島とは気候が温暖でね、生る果実もちょっと独特なんですよ、好みが分かれるところだけど、原料が良いってわけ」
丁寧な説明に黙って聞く様子のロー。
「成る程.....だが俺は、店主の腕もイイと思うがな」
原料選びから作業工程までは店主の仕事らしい、それならばこの女の腕がいいのだと、高く評価したロー。
「フフッ、それは嬉しいこと言ってくれるわね、ありがと。海賊のお兄さん」
男からの称賛の言葉に慣れているのか、軽く笑い嬉しそうに返事をした彼女。
簡単には頬の赤み一つ見せない、男になびかないこの女の態度は、ロー目には魅力的に映る。
とは言うものの、男を厳選したり、誘いを冷たく断る美女などはいくらでもいる、だが、彼女が相手にさりげなく気を配る気遣いをローはしっかりと感じていた。
口元が無意識に緩み、笑みをこぼすロー
だが、この二人の穏やかな会話はそう長く続かなかった