海の巫女

□一章 1.同じ名の女
4ページ/5ページ




「一人で、やってんのか?」


「何人かいますよ、でも今昼だから」



軽い会話を交わす二人。
彼女は、グラスを磨いている。





「海賊さんね」


「あぁ」





この街は、かなりの海賊嫌いであることは分かっていた。

豊かな島ほど、海賊というものには警戒心をはらう、道を歩いているだけでも、街人は、こちらが気付くほどピリピリした空気を作る。






「この街は、海賊嫌いが多いと思うが」


「私は大丈夫、兄が海賊でね」





彼女は怯えるどころか、敵意なく平常心で接してくる。






「そいつの名は?」




「そんな、名の通ってる海賊じゃありませんよ」





何の動揺も見せず淡々とそう答える店主。






「今晩も邪魔するぞ」


「いつでもどうぞ」





それだけ言い残し、ローはカウンターのテーブルに金を置いて店を出て行った。











次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ