海の巫女
□一章 1.同じ名の女
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「一人で、やってんのか?」
「何人かいますよ、でも今昼だから」
軽い会話を交わす二人。
彼女は、グラスを磨いている。
「海賊さんね」
「あぁ」
この街は、かなりの海賊嫌いであることは分かっていた。
豊かな島ほど、海賊というものには警戒心をはらう、道を歩いているだけでも、街人は、こちらが気付くほどピリピリした空気を作る。
「この街は、海賊嫌いが多いと思うが」
「私は大丈夫、兄が海賊でね」
彼女は怯えるどころか、敵意なく平常心で接してくる。
「そいつの名は?」
「そんな、名の通ってる海賊じゃありませんよ」
何の動揺も見せず淡々とそう答える店主。
「今晩も邪魔するぞ」
「いつでもどうぞ」
それだけ言い残し、ローはカウンターのテーブルに金を置いて店を出て行った。