海の巫女
□7.世界を駆け巡る号外
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「……!ヴィラ!!………ヴィラ!!!!」
「……っ!?」
随分長い間寝ていたような気がする
誰かの声に呼び起こされ、目を覚ますと両腕に重みと冷たさを感じた
「……目覚ましたか、ヴィラ」
「…………?エース…?…エース!!?」
やけに暗い視界で、懐かしい人の顔を見たと思った、だが、肌を刺す冷え切った独特の空気がここにあることが現実だと嫌でも教えてくるように……それは紛れも無い現実で。
ヴィラの目の前には海軍時代で一番深く“記憶に刻まれている事件”にて出会った海賊の一人_“火拳のエース”がいた
「え……なんっで……」
ヴィラは当然困惑した、パニックを起こしそうな勢いで。薄暗い視界の中で目にする鋼鉄の鉄格子…自分の海軍時代の知識が語っている、この場所の名前を。
“インペルダウン”
いや、あり得ない、私はもっと遠くのシャボンディ諸島という場所にいたはずだ。
なぜ?なぜ自分は今、監獄のような場所で鎖につながれているのだろう…意味がわからない。それだけでは無い、謎ならもう一つある、服が、格好が変わっているのだ。シャボンディ諸島にいた時の洋服とは違い、白い小袖に紅い袴を着用している…服が変わっていることよりも、見慣れない服を目にしても、なぜか良い着心地を感じる自分自身がいるのにヴィラは驚いた
だが今はするべきことがある、この状況を理解しなくてはならない
最新の記憶を辿ると腹に激痛が走った
(そうだ…私、セツアに……)
刻まれた傷と痛覚が気を失うまえの出来事を瞬間的に伝えた
十中八九セツアが自分をここへ連れて着たのだという答えは自然と導かれた
「おいっ……ヴィラ!!」
「!?、あぁ…エース」
記憶を思い出すのに必死だったせいか、エースの言葉を聴き流していてしまっていたらしい
「海軍のお前がなぜこんな所にいる…?」
驚いた方はエースの方も同じだ、いやエースの方が驚愕しただろう
ルフィの監獄侵入の報告を聞かされ、真偽を問うのに焦っている中、一人の女がこのLevel6に監獄された
上質な和服に身を包んだ艶のある黒髪を垂らす気を失ったその女は、どこからどう見てもLevel6に収容されるような外見には見えなかった
が、気を失う女を見てるうちにエースは一人の人物を思い出す。特徴的で美しい瞳が閉じられていることと、着ている物も2年前とは大分違っていたために、思い出すのに時間がかかったが、この女の名をエースは知っていた
2年以上前に出会い、できることならもう一度会うことを願っていた人物…ヴィラだったのだ
「海軍はもう2年前に辞めたの…エースはなんで…」
「あんた、新聞を読んでやせんのか」
誰かが会話に割り込んできた。
「あなたは…」
“海峡のジンベエ”
容姿を見た瞬間名を認識することのできるほどの有名人。
ヴィラは余計にわからなくなった、この際、自分のことは置いておくとしても、なぜ王下七武海のジンベエが監獄インペルダウンにいるのか?到底理解できない
だが、状況を理解できていないヴィラを信じられないように見るエースとジンベエからの視線で、可笑しいことを言っているのは自分の方だということはなんとなく気づく
きっとここで自分だけが知らない、号外が世界を駆け巡っているのだろう
「エース、ジンベエさん。この状況の知っている限りのことを教えてください」