海の巫女
□9.全ての元凶
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「………まさか、セツア…?」
細く小さな声だった、恐る恐る尋ねるヴィラ。それもそのはずだ彼とは十数年振りの再会だったからだ。
「へー、覚えていてくれたんだ。てっきり僕のことなんて忘れてしまったって思ったんだけどな」
彼の態度と声は彼女の予想を大きく裏切った、再会を喜ぶ雰囲気は微塵もない、彼女は行方がわからなかった存在が確認できて驚きと歓喜に満ちているというのに、彼の声は低く、それでいて殺気さえ感じられるほどに冷徹なオーラを纏っていた
「覚えてる…って当たり前じゃない…だって……」
「家族だから?」
彼女の言葉をまたもや先読みするセツアという男
「そうやって人情に熱い、“君たち親子”はほんと憎たらしいなぁ」
笑顔を向けるセツア、だが血が通っていないのではと思うほど美しすぎる笑顔だった、気味が悪い程に
彼の親子という言葉はきっと母と自分のことを言っているとは理解できたが、その後の言葉………憎まれることをしたという覚えは記憶になかった
「クククッ…前回もまた今回も本当に良く引っかかってくれる人だね。君は」
笑いが堪えられないような様子のセツア
「前回…?何言ってるの………」
「ふーん、まだ分からない?………………じゃぁ…この顔に見覚えは…?」
セツアが己の顔に手をかざすと、焼け爛れた様な別人の顔がそこには現れた
「その顔は……っ!!」