赤と白の戦慄

□1.出会い
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雷が鳴り響き、雨が激しく降り注ぐ
表の住人から忘れ去られた、汚れた街の一角

白さを見せない、さびれた壁には真新しい飛び散った血痕
そのそばには、もう人ではない肉の塊




「あぁ……またか」




そこに、長い髪を濡らし、ずぶ濡れで立ち尽くしている一人の女
目の前の死体を目にしても、眉一つ動かさない





バシャ……ッ!!





茶色く濁った水たまりを踏む音

その音に、女は静かに顔を音の元へと向ける





そこには、一人の少年が、ジッとこちらを見つめていた





返り血にまみれた、女の顔を見ても逃げ出すことはなかった

そんな少年に単純に驚く女






「………」



その目は、人の体の内部まで見定めるような瞳で、短い白い髪をした、端正な顔立ちの子供であった





「…お姉さん、人を殺したの?」




まだ、10もいかぬ子供が
震えることなく、ただ淡々と問いた



その声と目を見た女は、気づかれない程度に口角を上げ、きみの悪い笑みを見せる





「うん」





単純に普通に会話をするかのように人を殺したの?と聞く人間はまずいない、況してや子供だ


彼女は、子供に問てみることにした
答えの予想はついていた






「……坊や、私が怖い?」





すると、少年は無言で首を左右へと振る
髪についた雨の滴が飛ぶ

予想していた答えだ。







「お姉さんも僕と同じ、一人なんだ」





少しだけ、その子が笑ったような気がした

息を整えて、夜の空を見上げる女

激しい雨によって、血は流れおちていく






「そうだね。坊やもかい?」





無表情で、素直に頷く少年



その瞬間、大きな笑みを作る女





「坊や、名前は?」







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