長編

□04
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「なまえー、タオルくれー。」
「はい。お疲れ、堅治。さっきのナイスブロック!」


本日何度目かのやり取りにかすかに、だけど確かに視線が集まる。そのわかりやすさに内心肩をすくめる。
妙に上機嫌の私と二口、それと青根。……そんな三人を遠巻きに眺める他の部員という奇妙で珍妙でどうにも居心地の悪い状態が続いていた。


「……なぁ、お前らってそんな仲良かったっけか?」


痺れを切らしたらしい鎌先さんがとても聞きにくそうにしながらも言葉を切り込んできたのには正直感謝した。本人に伝える気は一切沸かないけど。


「仲イイっすよ?付き合ってるんですし。」
「は?付き合ってる?」
「はい。こいつ、俺のカノジョなんで手ぇ出さないでくださいね?……あ、それとももしかして鎌先さんってソッチだったりします?まぁ、でも俺もこいつのカレシなんでー、諦めてくださいね、ホモ先さん?」
「俺はソッチじゃねぇし、変な名前つけてんじゃねぇ!殴られてぇのか?」


いつもの調子の二口の軽口と鎌先さんの怒号が体育館に響く。このいつもの風景に安堵してちらりと茂庭さんの方を見遣ると彼はいつものように呆れたように笑っていた。


「へぇ、みょうじちゃん二口と付き合ってるんだ?」


先程よりも何倍も居心地の良くなった空間に息を吐くとずしっと肩に重量がかかる。それと同時にとても楽しげな声が耳に届いた。


「重いです、笹谷さん。」
「え、俺太ったかなぁ?」
「いや、それはわかりませんけど……離れてもらえませんか?」
「質問に答えたらな。」


私の肩を肘置きにして明らかに体重をかけてくる(加減されてはいるが重いのは変わらない。)笹谷さんはニヤニヤ顔。
ああもう、こういうときの笹谷さんは味方じゃないと面倒くさい。……とは言っても私だって多分同じようなもの、対処法くらいいくらでも心得ている。
笹谷さんに負けないくらいのニヤニヤ顔を作ってから口を開いてやる。


「堅治と付き合い始めたっていうのなら事実ですよ?」
「ふーん、やっぱ伊達の鉄壁マネージャーを落としたのは鉄壁ってことかぁ。」
「そんな異名初めて聞きましたけどね。」
「まぁ、お前を狙う輩からの呼び名だからな、モテるっていうのも大変だねぇ?」


笹谷さんの遠回しなようで直接的、それでいて半端なからかいを曖昧な返事でかわしていたら鎌先さんと言い合う二口と目があった。


「ちょっと笹谷さん!何人のカノジョの肩とか触ってくれちゃってんですか!?」


それを合図にばたばたと走り寄ってくる二口は完全に役者顔、最近よく見るやつだなぁ、なんて他人事みたいに考えていた。


「何だ、二口。嫉妬か?男の嫉妬は醜いぞ?」
「えぇ、嫉妬ですよ、ジェラシーですよ!なまえってば無駄にモテるんで不安なんですー!」
「……お前が言うなの極みだと思うわけですが、こういうヤキモチって愛されてる感じしてちょっといいですよね。」


私も負けず劣らずの役者顔を見せてやれば笹谷さんは「リア充爆発!」なんて呪文を吐き捨てて茂庭さんの元へと走って行った。
その茂庭さんの元には既に鎌先さんがいてグチグチと何かを訴えている様子。


「鎌先さんからかいすぎ。」
「あの人、反応いいんだよ。……てか、ヤキモチ?」
「鎌先さん相手に妬くとかないわー。」
「それは確かに。」


ゴリラだもんなー、と笑った二口の顔はもういつものバレー部の問題児の顔。
その笑い声を聞いた鎌先さんがギャンギャンとまたいい反応を返してすべてくれちゃうもんだから二人で煽って余計に怒らせてみたり、なんて日常風景。


「お前ら、ほんとふざけんなよ!」
「ふざけてませんよー?」
「そうですよ、至極真面目ですよー?」

「あー、もー、青根!」


いつもの賑やかな休憩時間はいつもと同じ茂庭さんの声を合図に動き出す青根に止められる。


君と私の大好きな場所。
(ちなみに私は茂庭さんに軽く頭を叩かれる。)



ーーー
伊達工は天使の集まりだと思ってるフシがある。

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