短編

□二口堅治
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「お前……どうしたの、その頭。」
「切っちゃった。」


入学当初から伸ばし続けていた腰まで届く長い髪をばっさりと切り落とした。
一目でわかるその違いに二口が目を丸くして近付いてきたのににこりと笑顔を見せれば変わらず驚愕を顔に浮かべたまま二口はじぃっと私の短くなってしまった髪を見つめ続ける。


「……見すぎ。」
「え?……あー、何か……びっくりして。」
「似合わないって?」
「……どーだろ。まぁ、見慣れないから違和感はある。」


違和感、か。
二口はショート好きじゃないのかな?切らなきゃよかったかも、なんて軽くなった頭に重たい後悔という石が投げ込まれる。先に聞いておくべきだったかもしれない。


「二口はロング派?」


こんな質問は今更だけど、自然な流れになるように、たったこれだけで会話が終わっちゃうのはもったいないと、なるべくいつもと同じ笑顔を浮かべて口を開いた。
これでもし二口がロング派だと言うのであればもう一度この髪を伸ばしてやろう。今からならば卒業までには元の長さは難しくてもそこそこの長さにはなるはずだ。


「……まぁ、ちょっと前までは。」
「なに、今は違うの?」
「うん、今はショート派。」
「……へぇ。」
「お前が今ショートだからな。」


意味は自分で考えるように、と笑って二口は私の頭をぐしゃりと掴むように撫でてすたすたと歩いて行ってしまった。


「……なに、それ。」


残された私は熱の集まる顔を隠せず一人焦るだけ。


判断基準は君なのです。
(先を歩く二口の耳が赤く染まってることに私は気付けやしない。)


―――
大事なとこではぐらかしちゃう系二口かわいいと思います。

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