リクエスト小説
□内緒の想い
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「香灯先生」
「うぇ、あっはいっ」
突然名前を呼ばれて振り返ると、カイト君のお父さんである、川本 海さんが居た。
シングルファーザーでいつも仕事で忙しそうな川本さん。カイト君は居残り組の中でも一番迎えが遅くて川本さんが迎えに来る時は眠ってしまっていることが多い。
「すいません、今日もこんな時間まで」
「いえいえ、お仕事お疲れ様です」
そう微笑んで言えば川本さんもぎこちない笑顔で返してくれる。仕事で迎えが遅くなってしまうのは仕方の無いことなので俺は気にしてないのだが、どうも気を遣わせてしまってるみたいだ。
「あ、カイト君眠っちゃってるので連れて来ますね」
「はい、有難うございます」
と、川本さんの死角に入ってふぅ、と息を吐いた。教室に入って眠っているカイト君と彼の荷物を抱き込んでから立ち上がる。
心臓に悪い。川本さんは心臓に悪いイケメンさんである。
カイト君は父親似、つまり川本さん似らしいので将来はとてもイケメンさんに育つのだろう。
やけに五月蝿い鼓動を無視して俺は川本さんの元にカイト君を連れていくために教室を出た。
待っている川本さんも同じような状況になっているとは知らずに。
End