短編U
□噂粉砕
1ページ/1ページ
匿名様リクエスト
目覚ましではなく、着信音で目を覚ました俺は表示された名前に飛び起きた。
[田中さん]
この表示は……
「はい、もしもし」
『もしもしじゃねえ! お前なんて事してくれたんだ!』
「なんて事……って何」
まぁ大体想像はつくけども。
あの食堂での説教の事だろうどうせ。別に親衛隊解散になるわけでもなければアイツが会長の座を辞退するだとかそんな話になってるわけでもないんだったらしょうもない電話で俺を起こすなよ、面倒だな。
『全部口に出てんだよ』
「口が滑った、そんで? 何? 俺が何かしなきゃいけない事ある?」
『親衛隊は』
「俺はあの後に事情説明して納得した者だけ残らせた。つっても除隊したのはハナから俺を隊長と認めてない奴ばっかだけど。
そんで――」
『事情説明っておまっ…アイツと恋人同士だっつったんか!?』
「うるせえ。言ったよ。
大体親衛隊入ってる奴であのデカヘタレにガチ恋してる奴なんて片手で数える程しか居ねーんだもんよ。“応援しますよ〜”って言われたわ」
そう言えば電話口で長く重いため息を吐き出す“田中さん”……基、前会長。
現風紀委員会委員長の実兄であの会長浮気からの俺ブチ切れ事件(長い)以前に俺の猫被りを見抜いた唯一の人だ。まぁだからつって何、って話なんだけど。
『はあーあ、こりゃ暫くはうるせえぞ。頼むから大人しくしてろよなぁ…俺が卒業するまでは』
「へいへーい」
ピ、と電話を切り学園へ行く準備をする。
つーか、前会長もこんなまどろっこしい事してないで表舞台出てきたら楽なのによ。
――――――――――――。
「しんえーたいちょー、俺の相手もしてくれよぉ」
「あんな強気な態度でさぁ、ベッドの上じゃ可愛いんでしょ〜?」
「どうせ会長には毎日可愛がって貰ってるんだろぉ?」
……。
ここって金持ちのご子息やら跡継ぎやらが通う結構シビアな学園ではありませんっけ?
あれ、俺の記憶違いか?
まあ金持ちだろうが普段は礼儀正しかろうが中身は所詮下半身主義の男子高校生って所か。
これビッチって噂広がってんだろうなぁ…。
つーか、あの食堂の口調聞いてても俺が下ポジだと思ってるコイツらの妄想力がすげぇな。その辺の腐男子と競わせても勝つんでね?
「あれれ〜、ビビっちゃって声も出ね……ッ!? いッでででで!!」
必殺、捻り技。
いや、金持ち子息の下品な言動にビビり倒してるわ。お前どんな教育受けてきたんだよ。
「何か勘違いしてるみてえだから一つ訂正しとくわ」
俺が腕を捻って押さえ付けている生徒と俺を囲っていた生徒達が怖気付く。
「俺がタチ、んでアイツがネコ。以上」
と言ってパッと手を離せば男子生徒は呆然としたまま口の中で「え」と呟く。
いくら困惑しようが事実だからなぁ。
……つーか、早く席つかねえと朝のHR始まるぜ。
と、そうやって呑気にしていた俺があのドヘタレ会長を引き連れた前会長の襲撃基問い詰めに合うまであと何時間…かな?
End