短編U

□おしえて
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俺は病気で歩く事ができない。
喋ることができない。
笑うことができない。
色んなことができません。

そんな俺に友達ができました。
喋る猫人族でした。

彼は俺に色んな事を教えてくれました。
ある時彼が言いました。

「喋ることができないのなら字を書けばいいよ」

俺は彼に字を教わりました。
またある時に彼が言いました。

「黒だけじゃなくて色んな色を使えばいいよ」

俺は彼に色を教わりました。
そしてまた彼が言いました。

「泣きたい時は泣けばいいよ」

俺は何も教わりませんでした。
彼も何も教えてくれませんでした。

それからいくつか日が過ぎ、太陽を何回も見ました。
月を、星を眺めました。

彼は来ませんでした。
ある時鳥の妖怪が来ました。青い綺麗な妖怪でした。

「もう彼は来ないよ。死んじゃったからね」

鳥の妖怪はそれだけ言うと飛び去っていきました。

俺はクレヨンを手に取りました。
壁に絵を描きました。
彼に届くように描きました。
壁が絵でいっぱいになりました。
今度は窓に絵を描きました。

星の絵、雪だるまの絵、プレゼントの絵

彼に届くように描きました。
頬に何かが流れました。
温かかったです。
でも彼に教わってないのでわかりません。
もう一度会えるならこの水の正体を教えて欲しいです。





End
 

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