短編U

□とても幸せなウサギです
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とある休日の午後。
先輩はご飯を食べて少しだけ眠っている。
薬は一日2回だし、今のところ点滴も打たなくていい。
俺が洗い物をしてる間は陸飛先輩が読書しながらだけどそばにいる。
ここ数日、ご飯を食べても吐いてしまう事が続いたけれど今日は大丈夫そうだ。

「陸飛先輩、先輩どうっすか」

「ん、寝てる」

「……冷えシートだけ変えるっすね」


外から時々生徒の声が聞こえるくらいで基本静かな休日。
俺は静まり返る室内で先輩の額の冷えシートをそっと剥がした。今日の朝方からつけているからか役目を果たし終えた姿だった。

「ん…、」

「あっ……、起こしちゃったっすかね…」

「……けん、と……?」

「はい、先輩。まだ眠ってていいっすよ」

目は覚めたがとろとろと微睡んでいるらしい先輩はゆっくりと起き上がろうとした。
俺は慌てて背中に手を差し入れて支える。

「先輩?」

「……だ、っこ……、」

そこまで言ったところで陸飛先輩が席を立つ。栞を挟んだ本を先輩の机に置いてリビングの方へ。
変に気を遣われた気がする…。

でもいつもは男前な先輩が甘えてくるなんて珍しい。少し不安定なのか、とか色々考えたけど甘えられているなら甘やかしたいのが彼氏の性だ。
布団を退けてベッドに上がらせてもらってふんわりと先輩を抱き込む。
寝起きだからか少し温かい身体に思わず頬が緩んだ

「先輩あったかいっすね…」

「な、まえ…よべ、……あほけんと、」

「はい、弘典先輩」

あほって酷いな、なんて心の中で笑いながら先輩の名を呼ぶ。先輩は俺に凭れ掛かりながらふふ、と笑う。

本当に珍しい。
今日は夢見も良かったみたいだ。

「けん、と…」

「はい」

「おれ、…、しあ、わせ……」



眠気が限界だったのかコテリと俺の肩に頭を預けて寝てしまった先輩。とんでもない爆弾を置いていったな・・・。

俺も同じ気持ちっすよ、先輩・・・。
先輩と毎日を生きれてすげぇ幸せっす。
なんて彼が起きたら言ってみようと思っていれば・・・






「襲う?」

「襲わねぇっすよ!」


盗み聞きの得意な隣人には困ったものである。



End
 

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