短編U
□罠に嵌った蝶
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僕の名前は不知火 智康。
小さな花屋を営む19歳です。
繁華街に近い所で商売をしているので『そういう方々』に喧嘩を売られるのも稀ではありません。
いきなり喧嘩を売られ、お花をぐちゃぐちゃにされるのは気分のいいものではないのですが、言い返して怪我をするのも嫌なので黙っていることしかできません。
そんな時、助けてくれた方がいました。
「お前ら、俺のシマで何勝手な事してくれてんだ」
それが今の恋人の谷原 慎史さんです。
「おい、アンタ。怪我ねぇか……悪ぃな、花こんなにしちまって」
そう言って彼らが踏み潰していった花を一緒に片付けてくれたんです。
そして、次の日にお店にあるお花を全部買ってくれたんです。
そして僕にこう言いました。
「アンタはいくらで売ってんの?」
その後の事はよく覚えていませんが慎史さんの秘書さんが言うには
「うちは人身売買は行っておりません!」
と彼に平手打ちをしたとか何とか。
まぁそれから、彼の熱烈なアプローチ故に付き合う事になったんですが。
今思えば。
「なぁ、トモーこれは?」
「はい、店先に置いてください」
とっくに彼の罠に嵌っていたのかもしれません。
End