短編U
□縛り付けて監禁すべきだと思う。
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「重い」
真顔で宣った恋人に俺も真顔で返すしかなかった。
つーか、いきなりそんな事言われても困るわ。
しかも
授業中に。
「屋久は恋愛観が軽すぎるからそう思うんだよ。やっぱりさ、恋人が別の人間と仲良くしてたら腹立つよね?」
いや、だからといって縛り付けて監禁すべきとは思わない。薄く考えには上がると思うが法律的なものが邪魔をして我に返るだろう。
しかも『別の人間』ってなんだ。
別の種族か宇宙人なのかお前は。
しかも話の流れ的にお前の恋人って俺だろ?
お前、俺を監禁したがってるのか。なるほど逃げよう。
「それは典型的な嫉妬だ。監禁するほどじゃない」
「屋久、軽い! 軽すぎるよ! 何で分かんないかなー?」
知らねぇよ。
っていうか『軽い』ってなんだ。
ゲシュタルト崩壊起こして意味もよくわかんなくなってるわ。
「取り敢えず授業中だ。前向け」
「俺より授業を取るんだね?!」
「当たり前だろ」
学生のやるべき事は勉強だろ。
あと、他の奴も授業聞く振りしてこっちに集中しなくていいから。
「屋久は俺より授業を取って幸せになれるの?!」
「将来には博識であるが故の幸せが待ってるだろうな」
「そんなのダメ! 俺がドロドロに愛して屋久を幸せにする! ……もっと言うとかんk」
監禁引っ張るなぁ……
煩い恋人の口を引っ掴んで自分の方に引き寄せると同時に近付いたおデコに思い切り頭突きしてやった。
「oh......!」
「ホントに重いと思う」
恋人の鞄から出ている手錠らしき物体を見ながら長く重いため息をついたのだった。
End