短編U
□ affection mutuelle
1ページ/1ページ
相思相愛。
それは僕らを縛る言葉。
「ねぇ、困っちゃうな。もう学校に行かないといけないのに」
困った様に笑う兄は決して僕を無理矢理引き剥がしたりしない。
だって僕を愛しているから。
「…」
「昨日は暴れちゃったからね、疲れちゃったね……おやすみ、こと」
『こと』と僕の名前を呼ぶ兄は僕を愛おしそうに慈しむように目を細める。
ピピピピピピピピ
あぁ、もう時間だ────
「…」
「うん、行ってきます」
兄は僕をベッドに寝かせて部屋から出る。
僕はまた兄を待つ。
喋ることも笑う事もせず。
ただひたすら兄を待つのだ。
この静かな病室の中で────
End