短編U
□有り得ない位には愛してる
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安藤 清彦先生は生徒指導の先生で、イケメンで愛想も良くてとても人気者の人だ。
安藤先生は月に一度、俺ら不良が隔離されているこのF組にやってくる。
生徒がちゃんと来て授業を受けているのか抜き打ちで見るんだって言っていた。
もしサボっていたら?
生徒指導室にある説教部屋で2時間は怒られるんだって。
ちなみに俺、加藤 鈴はこの辺一帯を仕切る不良グループ、『ドラゴネス』の副総長だ。
まぁ不良だからと言って、授業をサボるわけでもないのでこうやって席におとなしく座って板書をしているわけだが。
「…じゃ、じゃあ加藤君、この問題お願いします・・・」
「ういーす」
「ひぃっ!」
返事しただけなんだけど。
とてつもなく居心地が悪いのである。
この時間は選択授業。
下っ端の情報によると安藤先生は別の授業を覗きに行っているらしい。
安藤先生も居なくて、授業担当にはビビられるし、教室にいる雑魚共には鬱陶しい視線もらうし。
なんかもう最悪だった。
キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン
チャイムが鳴ると一目散に教室を出ていく授業担当。
……分かんねぇとこ聞こうと思ってたのに……と、あれは……
こちらの教室に向かって歩いてくるのは……
「安藤先生っ!」
「おお、加藤か」
「聞いてよ、安藤先生。あのね──」
安藤先生は嫌な顔一つせずに俺の話を聞いてくれる。
そんなところが俺の好きなとこ。
それに
「・・・あんま無理すんなよガキ」
わしゃわしゃと撫で回してくれる大きな手。
これがあるから頑張れるんだ…色んなこと。
「ガキじゃないですよーだっ」
だから俺は……
「そういうとこがガキなんだよ」
安藤先生が
「………………………………好き」
「あ? なんか言ったか?」
「いーえ、なーんにも?」
まだ秘密なんだけど、ね?
End