短編U
□その魔法に愛を込めて
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「コールド――!」
疲れ果てた後輩の声が夜の講堂に響いた。
「だから、イメージだって言ってんだろ」
その後に続くこれまた疲れ果てた俺の声。
俺――ジャイルは出来損ないの後輩――ルーアンナと特訓をしていた。
そう、魔法の特訓だ。
この世界には炎、氷、風、地、闇、光の魔法がある。人それぞれに得意不得意はあるものの、基本的に3歳以上になればどれも使える。
しかし、ルーアンナはやっと氷の魔法がかろうじて使えるという曖昧なラインに立っているところだ。
「・・・センパイ…やっぱり俺には魔法なんて使えないんスよ」
「阿呆か。この世界の人間が魔法を使えないなんて馬鹿みてぇな話あるわけないだろ」
「だって! 俺……もう17なのに…基礎魔法すら使えないなんて」
すっかり落ち込んでしまった後輩を慰めるため俺は一肌脱ぐことにした。
「ライト――、力を分け与えよ」
俺が杖を持ち唱えると、杖の先からぽわんと光の玉が出てそれがルーアンナの杖へ移った。
「センパ・・・イ?」
「魔力が少ないままじゃ、何度やっても同じだ。魔力と同じように気合と気力もな。・・・お前が強くなりたいから特訓してくれって忙しい俺に言ってきたんだろうが。お前が先に諦めてんじゃねぇよ」
少し睨むようにして言うと泣きそうだった後輩の顔はみるみるうちに明るくなっていった。
さて・・今日は成功するかね・・・?
End