短編U

□寂しがり屋のウサギです
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謙人side




お粥を食べて薬も飲んだ先輩は今夢の中だ。



隣では先輩の同室でクールな陸飛先輩が本を読んでいる。



「先、輩・・・」


眠っている先輩の手を握ってそう呟く。


「...謙人、泣きそうな顔してる」



本を読んでた陸飛先輩が突然そう言うから慌てて先輩を見るけど彼の視線は本に向けられたままだ。



「陸飛先輩、さっきからそのページばっかり見てますね...そんなにそのシーン好きですか」


「うん、先輩を心配しすぎる後輩の面が面白くて」


「挿し絵でもあるんですか」


「間抜けで泣きそうな顔...文で見ただけでも滑稽だろ」













この先輩、あとで覚えてろ...









「ん、ぅ...」




陸飛先輩に呆れた目を向けていると先輩が身じろいだ。
先程より顔色が良くなってるから明日は学校に行けるだろうか。


俺は安心して腰をあげようとした。




「どこ行くの」



陸飛先輩が不意にそう言って立ち上がるに上がれなくなってしまった。


「いや、食器洗いに行こうかなと」



「お前は家政婦か」




放置したらあんたやらないだろ。




「ウサギはさ...」





「...?」








「寂しいと死んじゃうんだって」









はい?





呆然と立ち尽くす俺に先輩は呆れたようにため息をつくと本を置いた。



「アイツ、兎年だから」


そう言って俺の横を通り、キッチンへ向かう陸飛先輩。




知ってます。






まぁそこまで言うなら...








「ん、...けん、と...」




「はい、先輩」




一緒に生きて…、強くなっていきましょう





End
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