短編U

□パートナー
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何かを殴る音と何かが擦れる音が路地裏に響いていた。
樒は相手の数を見て呼吸と共にため息を吐いた。

数が多すぎる...。




襲い掛かってくる男を蹴り上げ隙を突こうとしてきた別の男をナイフで切り裂く。


樒の今日の仕事は富豪の暗殺だった。
警備も手薄で軽々とこなし、バーに帰るつもりだったが...

殺し屋をしている以上恨みを買うのは仕方が無いのだが今回は何も動きがなかったはず...。


それとも情報屋の調べが悪かったか。
情報屋のMの裏切り...なのか。



そこまで考えてまずは目の前の目障りな蝿を潰すのが先だと自己完結し身体を無理に動かす。





グキリ────

敵を投げ飛ばした時、足から嫌な音がした。
きっと捻りでもしたんだろう。少しぐらついた樒を彼等は見逃しはしなかった。

彼等の刃の先が樒に向かう。樒が体制を立て直す暇もなく無数の刃に襲われた。







その場にいた誰もが勝利を確信した。が、聞こえてきたのは気持ち悪く肉の裂ける音と樒とは違う男の悲鳴だった。






「……ふ、う……?」



そこにいたのは人の肉を切り裂く為だけに作り出されたであろう鋭利なナイフを持つ、諷だった。



「こんな相手に何を手こずってやがる」



そう言ってまた敵を切り裂く。
櫁は少しだけ息を吐いて目の前の“味方”を見据える。



「何の真似?」

「別に」

「そう」



樒は何か言いたげにしたが、体勢を立て直して諷と背中合わせになる。

ただの肉片になった仲間に狼狽え、逃げ腰になる敵を見据えた。



────さぁ、反撃である。





















「そう、Mが」

「あぁ」


裏切り、と一言で言ってしまうのはよく思えばおかしいかもしれない。
自分達は仲間じゃない。同じ目的を持っただけの殺し屋だ。
自分の利益の為ならば周りを蹴落として上へ這い上がる。

でもそれならば。


「何で」

「気紛れだ、いちいち気にすンな」

「・・・・・・・・・そう」


樒はその場を立ち去る。
その背中を見つめ、見えなくなったと同時に諷もその場から立ち去った。

その夜、情報屋の亡骸が見つかった。
その死体は不気味に微笑んでいたという。




End
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