短編U

□パートナー
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薄暗い路地裏を血の匂いを纏わせた男が歩く。
男の名は――諷。殺し屋である。


仕事がうまく行かなかったのだろう、眉間にシワを寄せ周りを威嚇しながら歩いていた。

そこへ男が1人……












「よぉ、諷。絶好調かい?」


同じ殺し屋のM(はま)だ。
いつもヘラヘラとして落ち着きのない奴。仕事は出来るが諷としては気に食わない奴だった。


「……」

「おやおや、無視とは酷いね…折角イイ情報持ってきてあげたのに」

「……あ?」

「ほら、新人君居たでしょ…刃が随分ご執心な」




新人……刃……

樒の事だろうか。



「それがどうした」

「向こうの8番地でピンチになっててさ……ねぇ、いいチャンスだと思わない?」












・・・・・・















「何が言いたい」

「惚けちゃってぇ…素直じゃないなぁ。…新人君が死ねばまた刃の隣で働けるかもよって事よ」


Mはニコリと笑うとこう続けた。





「昔は刃の隣はお前だって言われてたのに今はどうよ? ……刃の隣にいるのはあの新人君。いくら鈍感なお前でも分かるよね? …捨てられちゃったならまた拾ってもらえばいいのよってね」



「アイツを殺して何になる」



Mはそんな諷の返しに楽しそうに笑う。


「漬け込めばいいじゃん。知ってるんだよぉ? お前が刃の隣にいる彼を恨みがましく見てた事。苦しいんだろ? だったら、奪っちゃえばいいじゃないか」









Mはもう一度ニコリと微笑んだ。













「俺達は仲良しこよしのお仲間じゃないんだよ? ……欲しいなら奪わないと、ね?」



諷の姿はもうなかった。
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