短編U
□海が綺麗ですね
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大きな海の前に建つ、小さな校舎。
窓から見える風景は青々とした空と白い雲。そしてエメラルドグリーンに輝く壮大な海。
僕はそれをいつも窓の外から見ていた。
「たっちゃん、寝てないと治るものも治らないわよ」
そう言ったのは風屋 倫之助先生。
先生は男の人なのに女……つまりはオネェだ。
僕は霧谷 竜矢。中学2年生。体が弱いから教室に行けなくてずっと保健室登校だ。
「風屋先生、なんでこの学校は目の前が海なの?」
「あら、それ昨日も聞いてたわよ。……そうねぇ、昨日と別の答え方をすると…この学校を建てた人がこの海を好きになったからよ」
先生はそう言うと「ほら熱上がってきちゃうわよ。寝なさい」と僕は強制的にベッドに戻され、カーテンを閉められた。
「あっ先生」
「何かしら?」
「昨日ね、国語の先生がお見舞いに来てくれて教えてくれたの! 『海が綺麗ですね』って風屋先生に言ってあげなさいって。ねぇ、どう言う意味なの?」
先生は少しだけ黙った。
「たっちゃんはまだ知らなくていいのよ。……だから早く寝なさい」
いつもはぐらかす先生はずるいと思ったけどそのまま言われた通りに眠りに入った。
風屋先生が
(あの国語教師、気付いてやがったか!)
なんて思ってるなんて知らずに。
海が綺麗ですね→あなたに溺れています
End