短編
□caramel lover
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さきいか様リクエスト
「津一〜!!」
「草間うるせぇ」
「何で俺に言わずに大学決めちまったんだよっ!」
「言うもんじゃないだろ・・・」
同じクラスの草間は俺の親友ポジだが頭が弱い。行ける大学が無ければ就職か・・・それとも。
「う〜〜〜〜〜、どうしよぉ・・・」
「知らねぇよ。あそこは受けたんだろ?」
「受けた、けど・・・」
歯切れの悪い草間は机に項垂れる。
俺は時計を確認してから慌てた。
「あ、やべ。俺もう帰らねえと」
「え〜〜こん後ハトバ行かねえの?」
「悪いな、今日恋人の誕生日なんだよ」
「・・・!」
ハッとした表情で机から顔を上げた草間は一拍置いて今度は泣きそうな顔になった。
「恋人いるなんて聞いてねえ〜ぞ〜!!」
「今言った。それじゃあ」
「リア充が〜!」なんて恨み多い声で叫ばれているのを無視して学校を出ると自転車に飛び乗って帰路に着いた。
「さてと、やるか」
パティシエの那古さんにスイーツを作って贈るなんて多分初めてじゃないか。
本当は市販品でもいいかな、なんて思ったんだけど『他の男が作ったものなんて〜』とか言いそうで面倒だったんだよな。男が作ったなんて限らないんだろうけど那古さんなら言いかねない。
どっちに転んでも面倒だったけど比較的機嫌を損ねない方を選んだ。でもあの人あんなんだけどパティシエなんだよなぁ。
『世界の那古』なんて呼ばれちゃってさ。
中途半端なの贈ったら殺されそう・・・。
な、んとか出来上がった・・・。
うわあ、キッチンきったな。
粉まみれだし、生地まみれだし。
改めて那古さんは凄いなぁと思いながら汚れてしまったキッチンを掃除した。
さあ、そろそろ那古さんが帰ってくる時間だ。
「えっ、これ津一が作っ・・・えっ、美味しっ・・・えっ最高のプレゼントだよっ」
なんて子供みたいにはしゃぎながらキャラメル味のカップケーキを食べた那古さんにはそれに負けないくらい甘いキスを贈ってあげた、かどうかは秘密ってことで。
End